異方性磁石材料を有効に使うために
異方性磁石材料は磁石をつくるとき(成形時)に外部から磁場(以下、配向磁場)を加えて目的の方向に磁化を揃える(配向させる)ことでカタログに示す磁石特性を発揮します。
配向磁場の強さと方向の設計(以下、配向設計)は異方性磁石材料を使う上で非常に重要な要素となります。配向設計次第で磁石の特性や表面磁束の波形が大きく変わります。
図1は、形状と材料が同じでも配向設計により表面磁束密度の波形が変わることを示したシミュレーション結果です。
同じ磁石の形状と材料でも配向設計により表面磁束密度の波形が変わることが分かる
異方性射出成形磁石の配向設計
異方性焼結磁石は多くの場合、磁石メーカーが磁石粉から形状まで加工した磁石を製造しており、配向設計は磁石メーカーが担っています(図2)。
これに対して異方性射出成形ボンド磁石は材料メーカーと磁石の成形メーカーが異なることがあり、材料を使用するユーザーが配向設計を担うことがあります(図3)。
図2 異方性焼結磁石 加工の流れ
材料メーカーの磁気特性は形状に加工された磁石と同等
モーターメーカーは、磁石メーカーの材料規格(残留磁束密度や最大磁気エネルギー積など)に沿った加工品を購入し使用します。
図3 異方性射出成形磁石 加工の流れ
形状に加工された磁石の磁気特性は材料メーカーの磁気特性と異なることがある
材料メーカー(当社など)は、一定の条件で成形した定形サンプルで磁気特性を測定し規格に基づいた製品として材料(異方性射出成形磁石材料)を販売します。
一方で、モーターメーカーは、成形した磁石の特性規格(表面磁束密度など)に沿った成形品を(購入し)使用します。このため材料を使うお客様での配向や成形条件など成形品を造る過程での条件が非常に重要となります。
配向設計とアプリケーションのオリジナリティ
焼結磁石は、材料特性が同じなら形状や寸法で同等の製品を造ることが容易です。
一方で異方性射出成形ボンド磁石は、寸法や表面磁束密度の結果だけではそれがどのような配向設計で造られたかまで知ることは容易ではありません。
このため、焼結磁石と異なり異方性射出成形ボンド磁石では配向設計の秘匿性を担保することができればアプリケーションのオリジナリティを持続できる可能性が高まります。更に射出成形磁石は単純なリング形状だけでなく凹凸を持った形状や他部品との一体成形などの形状の工夫でのオリジナリティも付加できます。
住友金属鉱山の磁場解析シミュレーション支援
異方性フェライト射出成形ボンド磁石は安価なため多く用いられていますが、同じ配向設計では異方性希土類ボンド磁石材料が持つ特性を十分発揮できない場合があります。
当社はお客様の製品開発における初期開発のコスト低減や短期のアプリケーション実現を、磁場解析を用いたシミュレーションで設計のご提案でサポートします。
図4は、Wellmax®材料を用いて成形した磁石の表面磁束密度の磁場解析シミュレーション結果です。
当社の磁場解析を用いたシミュレーション設計は従来の設計よりも高い特性となり、同じ材料でも高い特性が得られることが期待できます。
図4:磁場解析シミュレーション例(従来設計との比較)
従来設計に比べ、表面磁束密度が高く精度が高いことが分かる(赤線)
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