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X-TALK Vol.2 農業ハウスを変える。CWO®使用製品開発ストーリー

石川県かほく市の織物メーカー ㈱能任七様では、住友金属鉱山㈱の近赤外線吸収材料CWO®(セシウム酸化タングステン)の特長と能任七様独自の繊維加工技術を掛け合わせ、農業用ビニールハウス内の気温上昇を抑える高機能遮熱ネット「青天張(あおてんじょう)」を開発、販売網を全国に拡大されています。その開発の経緯と効果を中心に語っていただきました。

農業ハウスを変える。CWO®使用製品開発ストーリー

対談者プロフィール・メッセージ

光を通しつつ熱だけを遮断し生産者の収益アップに貢献

なぜCWO®を農業用資材に使おうと思われたのでしょうか?

能任 ある商社からビニールハウス用の防虫ネットの開発を依頼されたことが農業分野と関わりを持つことになったきっかけです。防虫ネットは防虫性も耐久性も風通しも高いものを開発することができたのですが、一つだけ残った課題がありました。それが遮熱性です。夏場のビニールハウスは室温が50℃に達することもあり、作物の生育に悪影響を及ぼします。いろいろな材料を用いて遮熱性が高いネットの開発を試みる中で出会ったのが住友金属鉱山さんのCWO®でした。

熊田 能任社長から最初にご連絡をいただいた当時、私は技術本部でCWO®の新規用途開拓のミッションを担っていたのですが、農業の、それもビニールハウス向けの用途だと聞いても最初はピンと来ませんでした。私は東北の生まれで、ビニールハウスは冬場に農産物を作るためのというものというイメージしかなかったため、なぜ遮熱が必要なのかわからなかったのです。しかし初めて打ち合わせをした時、夏場のハウスは非常に温度が上がるために野菜が高温障害を起こすのだと聞いて納得しました。それなら貢献できるだろう、ぜひ貢献したいと感じました。

能任 ハウス内の室温をただ下げるだけなら光を遮断すれば済む話です。しかし作物の成長には光は欠かせませんから、光を遮断してしまうと当然収量が落ちます。光を通しつつ熱だけを遮断することでなんとか農家さんの収益アップにつなげることはできないか。そんな発想からお付き合いがスタートしました。

数年の開発協力期間を経て商品化を実現

開発はスムーズに進みましたか?

能任 いやいや、非常に苦労しましたよ。一番苦労したのはCWO®の分散でしたよね。

熊田 CWO®は樹脂に混ぜ込む際にきれいに分散されないと近赤外線を遮断する効果が得られません。また、樹脂を糸状にして織る際に樹脂が切れる原因にもなってしまいます。それらを防ぐために分散剤を使うのですが、その分散剤は相手方の樹脂によって何十、何百種類と存在します。その分散剤を適切に選定することが我々の一つのノウハウであり強みでもあるのですが、最初はなかなかうまく分散できませんでした。
また、うまく分散できるようになったと思ったら今度は透明度が出ないという問題もありました。そうした複数の課題を乗り越え、ようやく2020年頃から軌道に乗ってきました。

能任 分散だけで2~3年かかりましたよね。その間、熊田さんにはずいぶん協力していただきました。特に、コストも設備も必要となる耐候試験や分散の評価は当社だけでクリアできるものではなく、かなり助けていただきました。その後、石川県立大学付属農場の福岡信之教授に可視光や近赤外線吸収率などの試験でお墨付きをいただいて、ようやく「青天張」の名前で商品化することができました。


青天張の見本

 

社会や地球に恩返しをしなければとずっと思っていた

住友金属鉱山としてそこまで積極的に開発に取り組んだのはなぜでしょうか?

熊田 最も大きな理由は、能任社長の想いやパッションが非常に大きく、その想いになんとかして応えたいと思ったからです。社長のそのチャレンジ精神とパワーは一体どこからくるのでしょうか?

能任 一度やってみたいと思うと諦められない性格です。寝ている時間以外はいつも考えているような状態になってしまう。開発には、その試行錯誤を速く回すことと「成功させるんだ!」というテンションを落とさず走り続けることが欠かせないのです。
開発は一人でできることはありません。僕のテンションが落ちてしまうと周りで付き合ってくれている人もテンションが落ちてしまう。それでは新しいものはできません。言葉で「無理だ」と言うまでもなく、態度で伝わってしまいます。

熊田 私も社長の取り組みを通じて農業に貢献したいという気持ちを非常に強く持つことができましたし、共に完成させようと思う気持ちが日に日に強くなりました。
住友金属鉱山は非鉄金属の会社で、鉱石を採掘することが事業の一部です。ある意味、地球から鉱石をいただきながら収益を上げさせていただいてきた会社ですから、社会や地球に何か恩返しをしなければいけないとずっと思ってきました。そんな中で能任社長から農業に貢献できるチャンスをいただいた。これこそ懸命に取り組まなければいけないミッションだと思いを強くしました。

能任 最初に熊田さんとお会いしてもう5年以上になりますが、そういう気持ちでお付き合いいただいていることを感じていたので不安に思ったことは一度もありませんし、とにかく信頼感が大きく心強いです。開発する側がただひたすらまっすぐ開発に邁進できる環境を作ってくださる。「ここまでしてもらえたら誰でも走るやろ」と思いますね(笑)。

導入事例:鹿児島市内営農家 林氏

温暖化による夏の高温条件下でも、ハウス内環境を大幅改善

現在33棟のビニールハウスで水菜やホウレンソウなどのいわゆる「軟弱野菜」を栽培していますが、そのうち自ら所有する16棟のハウスに「青天張」を取り入れています。以前は太陽光を80%遮光できるシートを使っていましたが、光合成に必要な波長域も遮ってしまうため、暑さは防げるものの生育の面では課題がありました。また遮光シートがないハウスでは気温が非常に高くなるため、まだ日が昇る前の朝4時頃から収穫するなど、生活サイクルの面でも負担がありました。

しかし、青天張にしたことで高温期でも赤外線を遮断することでハウス内の温度をコントロールしながら、生育に必要な可視光線を十分作物に届けることで、生育環境が大きく改善されました。発芽率も安定し、収量は以前の約1.5倍に増えました。ハウス内の暑さも軽減できるため、9時半ごろまでは普通に収穫作業ができ、時間を効率的に使えるようになりました。これは農業における「働き方改革」だと思います。

さらに、青天張は光を拡散させる性質もあるので、山影で光が届きにくかったハウスの端でも作物がしっかり育つようになりました。都市部や建物の陰になるような土地でハウス栽培をする場合でも、これなら収量を確保できると思います。一般的なビニールハウスであれば1人でも張ることができるので、特別な設備投資がいらないことも魅力です。

青天張を取り入れて以来いろいろな輪が広がっています。2021年に生産者仲間4名と7,000㎡のハウスを新たに建てる予定で、そのハウスにも青天張を導入することにしました。ぜひ多くの生産者さんにもこの効果を知ってほしいと思います。

 


青天張は鹿児島市の農業試験場でも農作物の栽培試験などで使用されている

1+1が5にも6にもなる化学変化をこれからも起こしたい

今回の共創により「農業に貢献したい」という想いは実現できましたか?

能任 今回、生産者である林さんのお話を聞かせていただいたことで少しは貢献できているかなと感じた一方、これからの日本の農業全体のことを考えたら、効率化や収量増につながる「青天張」をもっともっと広げなければいけないとも感じました。当社としても、たくさん使っていただければさらに優れた資材の開発もできるようになるでしょうし、そうすれば、おもしろいもの、より必要なものを生み出せるようにもなると思います。

熊田 私も今回、生産者様の現場までご一緒させていただき、当社の素材の力で収量が確実に伸びていること、また実際に作物が非常にイキイキと育っていることを知り喜びを感じましたし、CWO®が大きな可能性を秘めた材料であることを再認識しました。これは今まで私が携わってきた材料事業では味わえなかった感覚ですし、能任七さんとの出会いがなかったらこの感動はなかったと思います。

今後はどのような共創をお考えですか?

能任 当社はスポーツ用品向けの織物製造が主力ですので、今後はCWO®を活用した技術をスポーツ用品にも展開したいと思っています。
昨日と今日でやっていることが一緒では事業を長く続けていくことはできません。試行錯誤を続けなければ必ず会社は傾きます。そうした気持ちを胸に、今後も住友金属鉱山のみなさんとの関係を続けていきたいと思います。
熊田 社長の「昨日と今日でやっていることが一緒では事業を長く続けていくことはできません。」というお考えは、X-MININGの理念のひとつで、非常に共感しています。
X-TALK vol.1 ~立ち上げの経緯や想い、目指すべき未来~

化学の世界では、1+1が2であるとは限りません。思いもよらない変化が起きることで1+1が5にも6にもなります。我々が予想もしなかった化学変化が起きれば、これまで描けなかったようなものが生み出せる。能任社長と作り上げた「青天張」はまさにそれが形になったものでしたし、それが実現できる材料を当社が持っていることは誇るべきことだと思っています。
能任七様とは今後も新しい化学変化を共に生み出したいと思いますし、これをご覧のみなさんからも、我々が考えもつかないようなアイディアを共創するために、ぜひお声をおかけいただければうれしいです。

 

※2021年7月取材

※取材は事前の検温やソーシャルディスタンスを保つなど感染症対策を実施。撮影時のみマスクを外しました。

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