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X-TALK Vol.5 産学連携の取り組み~無機粉体材料と有機技術の融合

技術やノウハウを自社固有のものとするのではなく、外部の企業などと連携することで自社内では生まれ得ない新しい製品やサービスを生み出す「オープンイノベーション」。その取り組みは企業間で行われるものばかりではなく、企業と教育機関との間でも積極的に取り組まれるようになってきています。いわゆる「産学連携」と呼ばれるものです。 住友金属鉱山では、自社開発の近赤外線吸収材料「CWO®」の活用において山形大学大学院の川口正剛教授と共同研究を実施し、CWO®の樹脂カプセル化に成功しました。その連携の背景や成果について、川口教授と当社グループ企業 大口電子株式会社で機能性インク材料の研究開発に携わる猪狩敦が語ります。

産学連携の取り組み~無機粉体材料と有機技術の融合

対談者プロフィール

出会いから1年でCWO®のカプセル化に成功

猪狩 私共が川口先生と初めてお会いしたのは2018年のことでした。当社オリジナルの材料である「CWO®」を商品化するうえで高温アルカリへの耐性を高める必要があり、そのためにはCWO®のナノ粒子を高温アルカリに強い樹脂で緻密に覆うことを検討しました。しかし当社にはその技術がなく、国内の研究事例を調査したところ、川口先生の研究室でジルコニアナノ粒子のカプセル化に成功した実績をお持ちであることを知り、相談させていただきました。
川口 私の研究グループでは、高分子の合成化学と物理化学の境界領域において主に3つの分野について研究を行っています。
1番目は、合成した高分子がどのような形で存在しているのか、その形は分子の何で決まるか、それをどのように調べるのかなど、高分子科学の基礎を広げるような研究。2番目は不均一系重合に関する研究。不均一系重合は均一系重合よりもさまざまな利点があり、微粒子(ラテックス)が得られる方法として工業的に幅広く用いられています。そして3番目は有機・無機のハイブリット化による光学材料の設計に関する研究です。
一つの研究室としては幅広い研究分野を対象としているように見えるかと思いますが、無機粉体材料に関する知識はありませんでしたので、「こういう分野もあるのか」と新鮮でしたし、面白い研究になりそうだなと思った記憶があります。
また、実際にお話を聞いてみると無機粉体材料における住友金属鉱山さんの技術力が非常に高いことがわかり、そこに有機系の技術を組み合わせていけば、1+1が3にも4にもなるような研究ができるのではないかとも感じました。

猪狩 実は、樹脂の中にCWO®のナノ粒子を内包化することなど本当にできるのだろうかと思っていたのが正直なところでした。市販の分散剤ではいつまでたっても実現できなかったと思います。その点でブレークスルーとなったのは、やはり先生の研究室オリジナルの高分子分散剤を自由に設計できたことだったと思いますが、先生のお立場では、実際に研究を進めるうえで難しいと感じたところはありましたか?
川口 我々の最新の研究技術を使えば高分子の設計はできると思っていましたが、工業化ということを考えると別の発想も必要となります。性能の高さを意識しながらいかに安く作り上げていくか。この点についてはトライアンドエラーを重ねなければいけません。そうしたところに研究の面白さがあるのですが、同時に難しいところでもあると感じました。
猪狩 これでも最初に話をさせていただいてから一年で当社が想定していたカプセルが出来上がりましたから、今あらためて、先生の研究室の技術が高度であることを実感しています。

産学連携なら基礎研究を含めた包括的な研究開発ができる

猪狩 当社が産学連携に有効性を感じるのは、大学の研究機関にある豊富な情報を共有していただける点です。また、高度な研究機器や優秀な学生のみなさんの力を共有できることも魅力です。先生は当社以外にもさまざまな産学連携を経験していらっしゃると思いますが、先生のお立場からは産学連携の取り組みをどのように捉えていらっしゃいますか?
川口 これまで10社以上の企業と研究を共にしてきましたが、ほとんどの場合は2~3年の期間で共同研究が終わります。大学として基礎研究をしっかり押さえようというスタンスはどの研究においても変わりませんが、当然企業としては研究をビジネスにつなげる意図をお持ちであるわけですから、一定の期間でしっかりと実績を出さなければいけないという点においては通常の基礎研究にはない厳しさを感じますね。
猪狩 例えば企業同士の研究、いわゆる「産産連携」では、互いの強みを合致させ課題に対してスピーディーに解決を図ることは可能である一方、課題によっては基礎的な研究からのアプローチが必要な場合も少なくありません。しかし、産産連携ではなかなかそれが難しいものです。その点、産学連携は基礎的な研究も含めた包括的な研究開発を進めるうえで最良の手段の一つであると考えています。

「学」だけでは難しい研究のスケールアップに「産」が貢献

川口 産学連携は学生にとっても有効で貴重な経験となります。住友金属鉱山さんとは月一回のミーティングをさせていただいてきましたが、そこで企業の方と一緒にアイディアや質問を持ち寄りミーティングさせていただいたことは、学生が社会人力を身につけるうえで大きな経験だったと思います。目的や目標に向かう中で企業の技術者の方からアドバイスを受けたり、困った時に助けていただいたり、そうした交流をすることによって、私一人では、また大学では教育できないような力を養うことでできるメリットがあると思っています。基礎研究と違いアウトプットが比較的明確な点も、学生にとっては魅力であるはずです。
さらに、とりわけCWO®に関して言えば、研究をスケールアップしなければいけない際に資金面や機器の導入における電気工事なども含めて協力していただき、そこで一気に研究が進みました。これは大学だけでは決してなし得なかったことです。
猪狩 そういう意味で「産」が果たす役割というのは非常に大きいのだろうと思います。もちろん当社にとっても、また一研究者としても、基礎的な研究からのアプローチ方法や論理的な課題解決への道筋の作り方などにおいて、先生や研究室のみなさんの取り組みの中に参考にすべき発見がたくさんありました。
川口 実は、共同研究といっても実際は大学側でほぼ100%研究を行い、それを単に報告するだけのような、共同研究というよりは受託研究といえるケースも少なくありません。その点、住友金属鉱山のみなさんは私共と一緒になって研究を進めようとしてくださった。そこに産学連携の素晴らしさがあったと思います。大学ではできない測定などを住友金属鉱山さんでやっていただき、その結果をフィードバックしていただいて研究を次の段階に進める。そのキャッチボールが非常にうまくいきました。
やはり、研究も「人」ということでしょうね。住友金属鉱山のみなさんの人柄や研究に対する姿勢が素晴らしく、そこに信頼関係が生まれたからこそ、キャッチボールがうまくいったのだと思います。本当にざっくばらんに、かつフレンドリーにディスカッションさせていただきました。

共同研究の様子。この日はオンラインで行われた。

お互いがもう一歩ずつ踏み込み、新しいイノベーションを

猪狩 今回の研究の成功を受け、弊社では今、CWO®を用いた新しい分野への参入を模索しているところです。ここから商品化への道のりでは当社の自助努力が必要ですので、今度はエンドユーザーさんとキャッチボールをしながら、ぜひとも事業化につなげていきたいと考えています。
川口 私としても、今回の成果が一つでも多く製品化につながれば技術者冥利に尽きます。期待しています。
猪狩 先生の研究室とは2022年度からも別のテーマで共同研究を進めていくことになっています。共同研究をスタートして5年目となるわけですが、これは非常に珍しいケースだと思います。
川口 確かに共同研究をしても3~4年で終わってしまうことが多いのが実状です。その研究を継続していくためには、大学として企業側にもう一歩、また企業の方々にも大学により踏み込んでいただくような関係が作れればいいのだろうと思っています。例えば製品化に近いところまで大学内で作ってしまうとか、共同でCWO®の会社を作ってしまうとか。お互いにもう一歩ずつ踏み込めば、より新しいイノベーションが起きるのではないかと思っています。
猪狩 ご意見ありがとうございます。新しいテーマのゴール、目標に向かって、当社としても努力を重ね、引き続き先生と共に研究開発を進めていきたいと思っています。

川口先生と研究室の学生さん

「工学部キャンパス内にある国の重要文化財 旧米沢高等工業学校本館(写真提供:山形大学)」

「山形大学工学部は山形県米沢市にキャンパスをおき、地域に根ざした教育を行っている(写真提供:山形大学)」

川口研究室|山形大学 工学部 高分子・有機材料工学科
https://polymorg.yz.yamagata-u.ac.jp/laboratory/all/labo_b/

※2022年2月取材
※取材はオンラインで実施。

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