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X-TALK Vol.7 【Part 1】 共創で切り拓く繊維革命
CWO®の活用:イノベーション編

共創で切り拓く繊維革命
CWO®の活用:イノベーション編

住友金属鉱山が開発した近赤外線吸収材料「CWO®」は、新しい市場を生み出そうという熱い想いを持つパートナー企業様との共創により、その可能性を大きく広げ続けています。今回ご登場いただく2つの企業は、いずれもそれぞれの業界で創業100年以上の実績を誇る国内有数の老舗企業です。共同印刷様は創業125年、瀧定名古屋様は創業158年(いずれも2022年時点)の歴史を誇っています。そんな2つの企業と住友金属鉱山では、CWO®を用いた新しい機能性繊維の開発に成功。衣料に用いることで太陽光発熱機能に加え近赤外線のカットによる盗撮防止など様々な機能を持つ繊維革命ともいえる素材が生まれました。より多くの人に快適を提供する、これからの時代にこそ求められる素材です。

この先の10年、50年、100年を見据えて挑む、CWO®※を巡る共創のストーリーを、瀧定名古屋株式会社 代表取締役社長 瀧健太郎様、共同印刷株式会社 上席執行役員 技術開発本部長 髙木豊様と、住友金属鉱山株式会社 機能性材料事業本部 粉体材料事業部長 佐伯典之および同 企画開発部長 東福淳司が語り合います。

【Part 1】は住友金属鉱山と共同印刷様の出会いのお話からスタートします。
※CWO®は住友金属鉱山が国内外で特許と商標を有する近赤外線吸収材料です。

対談者プロフィール

共創による「視点の転換」「技術の読み替え」

東福

CWO®はいわばイノベーションの種=「シーズ」にあたるものです。研究開発は不確実性の高い経営活動であり、企業が生み出す新技術などの知識・資源のすべてがイノベーションに結実するとは限りません。多くの時間と費用をかけて開発した画期的な技術でも、有効に活用できずに埋没してしまう例は枚挙にいとまがありません。自社のシーズをニーズに繋げてイノベーションを起こすには視点の転換が必要であり、これは自前主義にこだわっている限り難しいことです。外部の企業やユーザーなど、従来とは異なる視点からシーズを見る存在があって初めて可能になるものと考えています。CWO®というシーズを確立することと、それを商品として完成させるということは異なる道程である、というわけです。共同印刷さんや瀧定名古屋さんが、CWO®を面白いと言ってくださり、色々な角度からの「視点転換」や「技術の読み替え」を行なってくださったことが我々にとって大きな機会となりました。

髙木

当社は総合印刷会社としてさまざまな製品を世の中に提供しており、その中には有価証券関係の仕事もあります。有価証券の印刷においては悪用を防ぐために印刷技術によってプロテクトをかける必要があり、そのための技術も日々研究していますが、その中でCWO®が従来の有価証券に使われている偽造防止関連の材料とは違った特徴を持つことを当社の開発者が見つけ、問い合わせをさせていただいたのがきっかけでした。

東福

2013年のことでしたので、もう9年前ですね。

髙木

はい。その9年の中でCWO®のあらゆる可能性を知ることになりました。CWO®の凄いところは、無機顔料で透明性が高く近赤外線吸収ができること、そして分散が非常に良いことです。単なる近赤外線吸収だけなら他にも同じような材料はあるのですが、分散性が高いためにインクなどに加工にしやすい特徴がありました。有価証券の印刷というのは印刷技術の中でも最もハイグレードな要素が求められるものの一つですが、CWO®自体の完成度が非常に高いためそのハイグレードな印刷にも十分に対応でき、かつホログラムよりもコストが安いという魅力もありました。

その後、CWO®のこの優位性を他の用途にも転用できないかと考えました。CWO®が近赤外線を吸収し発熱する特徴があることはわかっていましたので、それをもとに保温用の紙袋を作るなど、いろいろな製品への展開を検討しましたが、その中で行きついた発想が繊維です。繊維メーカーの機能性素材はファッション性が重視される一方、効果の根拠が曖昧なものが多い状況でしたので、そこに確実な「シーズ」を導入し、ニーズと合致させれば、こんな強いものはないだろうと考えました。

東福

発想の転換であり技術の転換ですよね。近赤外線だけカットして吸収してしまうから熱が防げるというのが我々の発想。共同印刷さんは、その熱を逆に利用することを考えた。この発想は本当に凄いと思いました。

技術者も驚いた「悔しいぐらい優れた材料」

髙木

そこからはいろいろな繊維メーカーさんの市場調査を徹底的にやりました。これまで、温まる効果がある繊維としては吸湿発熱材料というものが需要を誇ってきましたが、温まるといってもせいぜい1℃か2℃です。しかしCWO®ならプラス10℃も容易に実現できます。それをなんとか証明したかったのですが、私たちは服屋ではありませんので、いくつかのアパレルメーカーに話を持ち掛けました。ところが、どこも付き合ってくれないんです。「印刷屋が何を言ってるんだ」という話になってしまう。そこで、買ってきた服に自分達でCWO®を塗工したんです。印刷屋なので塗工は得意ですからね。そうして手作りでCWO®を施した服を作り、寒冷地として富士山の五合目まで行って試すなどしました。それで十分に温まることが体感できたところで声を掛けさせていただいたのが瀧定名古屋さんです。私達にはデザインやファッションといった分野のノウハウはありません。そこを意識して仕事にするノウハウを持っており、業界の中でも生地の保有率が一番高い瀧定さんに相談をしました。

東福

塗工した服は当社にも持ってきていただきましたよね。新橋の本社ビルの前で佐伯も試着しましたのでよく覚えています。そこまでうちの商品を信用して、愛してくださる。実証してくださっている。瀧定さんも最初は面食らったのではないかと思うのですが、共同印刷さんのその熱意があったから瀧定さんも動いてくれたのだと思います。

近赤外線吸収材料(CWO®)を塗工した衣類の着用当社近赤外線吸収材料「CWO®」を塗工した衣類の着用

そもそも本業ではない物を自分達でまず作り、実証したうえで瀧定さんにプレゼンをする。我々と一緒になって「遊んで」くれる。ここが共同印刷さんの凄さだと思います。もし鉱山会社である当社からアパレル業の瀧定さんに直接相談をしても、きっと言語が通じないような状況になってしまったと思うんです。そこには通訳が必要であり、その機能を果たしてくださったのが共同印刷さんということになると思います。

髙木

市場をくまなく調査して、「ここまでやったんだからやらないという選択肢はないよね」という状態で瀧定さんに相談をしました。それがうちの、通訳としての責務だったのかもしれませんし、一方では住友金属鉱山さんに対する競争心もあったかもしれません。うちの技術者はCWO®のことを、「認めたくないけれど悔しいぐらい優秀だ」と言っています。ここまで暖まるものは世界中を探しても恐らくない、宇宙空間に持って行けるレベルだろうと。それほど完璧なものを作られてしまったからこそ、どうしても繊維は成功させたかったのだと思います。負けたくないという気持ちがなかったら、多分ここまでやらなかったでしょうね。

彩り豊かなあたたかい服をすべての人へ

佐伯

我々がいくら自社の製品を良いものだと思っていても、相手方に良いと思っていただけなければ、また相手方の会社の中に積極的に推し進めてくださる方がいらっしゃらなければ、何も前に進みません。今回共同印刷さんに展開いただいているものは我々がまったく想像し得なかったものでしたが、世の中のために活かしていけるのではないかという大きな期待を感じています。

髙木

世の中のためにということでいえば、一つはお年寄り向けの商品の開発があります。お年寄りの場合、動きがどうしてもゆっくりになりますから、冬場は服をたくさん着こまないとなかなか体が温まりません。しかしCWO®を使った服であれば、薄着でも十分に体を温めることができます。また冷えやすい方でも十分に寒さを解決する服をご用意できる。CWO®の特性上、色のバリエーションも豊富に展開できますので、あたたかさを実現しつつおしゃれに貢献する展開が考えられると思います。

さらに、たいていの繊維メーカーではあたたかさを担保するために糸に工夫をします。でもCWO®ならその必要はありません。普通の糸でも十分に効果が得られます。そうすると、高い技術や占有的な技術を持ったメーカーでなくても製造することができ、コストを抑えることに繋がります。

東福

これこそまさに共創ですよね。違う分野にある会社同士が、発明するスキルと商品化するスキルを持ち寄って、まったく想像しなかった新しいものを作る。共同印刷さんにやっていただいたことは、「X-MINING」のまさに好例だと思います。

※X-MININGの理念については下記ページをご覧ください
X-MINING(クロスマイニング)とは|X-MINING|住友金属鉱山株式会社

 

※本対談で紹介しているCWO®の詳細については製品ページをご覧ください。
近赤外線吸収材料の製品ページはこちら

 

CWO®を使用した生地の体感検証風景CWO®を使用した生地の手袋と一般生地の手袋での発熱の違いを検証する様子
CWO®を使用した手袋(右手)を使用したほうが、温度が上昇していることが分かる

CWO®を使用した生地の機能試験結果CWO®を使用した生地のほうが10度の温度上昇が見られた

 

※2022年9月取材
※取材は事前の検温、手指の消毒、換気の実施やソーシャルディスタンスを保つなど感染症を対策して行い、撮影時のみマスクを外しました。

 

【後編】CWO®を活用した共創で切り拓く繊維革命

共同印刷様からバトンを受けた瀧定名古屋様の挑戦のお話については、「【後編】CWO®を活用した共創で切り拓く繊維革命」でご紹介しています。

X-MININGとは

「X-MINING(クロスマイニング)」は、住友金属鉱山のDNAのもとに新たに始まる、未来を見据えた新しい共創のかたちです。
日本を代表する資源製錬会社の一つ住友金属鉱山には、積み上げた独自の技術と素材力があります。その技術や素材力も今や私たちの手の中でのみ守り育てる時代ではなくなりました。ならば、それらを有効に活用しイノベーションを実現するにはどうすべきか。その答えを共に探すパートナーと技術の創出や課題の解決に取り組むプロジェクトが「X-MINING(クロスマイニング)」です。

本ウェブサイトでは、材料の機能や技術、SDGsに貢献するソリューション事例など幅広く紹介します。当社製品と皆様のアイデアを”共創"(クロス)させ、社会にインパクトを与える新たな価値を“掘り起こすこと”(マイニング)を目指します。

MATERIALS ストーリーに関連する製品紹介

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X-MININGは、住友金属鉱山とあなたで新たな技術の創出や課題の解決に取り込むプロジェクト。お気軽にお問い合わせください。