閉じる

Search 検索

Glossary 用語集

希土類元素(レアアース)

希土類元素(レアアース)とは、原子番号21のスカンジウム(Sc)、39のイットリウム(Y)および57~71のランタノイドと呼ばれる15元素の総称で元素の周期律表の第Ⅲ族に属するアクチノイド系元素を除いた元素のことを指し、比較的稀な鉱物に含有するためこの呼び名で用いられています。
英語のRare-Earth Elementの頭文字を取ってREEと略して表記されることもあります。

レアアースと似た用語にレアメタル(希少金属)があり時に混同されて使用されることがありますが、その明確な定義はなく存在量が稀であったり、技術的・経済的な理由で抽出が困難な非鉄金属のことを指し、希土類元素以外のリチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)なども含まれた総称です。
この総称は日本独自の造語で英語圏では希土類元素として認識されることもあるので注意が必要です。

希土類元素一覧

希土類元素の特徴

本来、希土類元素(レアアース)は上記のように17元素を指しますが、近年ではランタノイドにクローズアップされて使われています。ランタノイドは、存在比は産地により異なりますが同じ鉱石中に混在し鉄鉱石や銅鉱石のように鉱石中に単体として産出されることはないと言われています。埋蔵量は金(Au)や白金(Pt)などの貴金属に比べると多いですが、鉄(Fe)や銅(Cu)などに比べると少ないです。
また、希土類元素の生産国では中国が圧倒的なシェアを占めていますが、実は埋蔵量では中国以外にもブラジル、ベトナム、ロシア、インドなどでも相応の埋蔵量があり、近年では日本近海の1,600mを超える海中深くにもレアアース泥と呼ばれる鉱床が拡がっていることが判っています。ただ、中国が希土類元素で圧倒的なシェアを誇る所以は各元素の分離・抽出の製造所を寡占していることにあります。

希土類の一般的な用途

各希土類元素の主な用途は次の通りです。

ランタン(La):光学レンズ、ニッケル水素電池の負極材、蛍光体など。

セリウム(Ce):ガラス等の研磨剤、排ガス触媒、蛍光体など、最近では固体酸化物燃料電池(SOFC)用としても注目されている。

ネオジム(Nd):焼結磁石、ボンド磁石、YAGレーザーの添加物、ガラス添加剤などで、最も磁力が強いネオジム鉄ボロン磁石として風力発電機、電気自動車(EV)のメインモーター、エアコンのコンプレッサーなど需要が急増し価格高騰が危惧されている。近年では、より軽希土のランタン(La)、セリウム(Ce)と混合したミッシュメタルを用いたネオジム鉄ボロン系焼結磁石などもある。

プロメチウム(Pm):天然では安定な同位体が得られておらず工業的な使用はない。

サマリウム(Sm):磁石、触媒など。サマリウムコバルト磁石は熱安定性が高くネオジム焼結磁石に次ぐ磁力を持つためネオジム磁石が発見されるまでは多く用いられていたがコバルトを多く含み高価であること、ネオジム磁石よりも磁力が低いこと、ネオジム磁石よりも脆いことから現在ではより熱安定性が求められる一部の用途に限られている。

ユウロピウム(Eu):発光体や蛍光体として使用されている。

ガドリニウム(Gd):ネオジム鉄ボロン磁石の添加剤などで最近では磁気冷凍用材料として研究が進んでいる。

テルビウム(Tb):ネオジム鉄ボロン磁石の添加剤、印字ヘッドなど。

ジスプロシウム(Dy):ネオジム鉄ボロン磁石の添加剤、レーザーなど。特にネオジム鉄ボロン磁石では保磁力を高める効果があり高温域や強い減磁場が加わる用途で使われる磁石に添加されている。鉱石中の含有量が少なくネオジムと同様に需要が急増し価格高騰が危惧されており、ジスプロシウムを使わないジスプロシウムフリーのネオジム鉄ボロン系磁石も開発が進んでいる。

ホルミウム(Ho):YAGレーザーの添加剤などがあるが含有量がより少ないこともあり利用は僅か。

エルビウム(Er):YAGレーザーやガラスの着色剤など。

ツリウム(Tm):手術用のレーザー、可搬型X線装置などの他に近年では発光材料としても研究されている。

イッテルビウム(Yb):YAGレーザーやガラスの添加剤など。

ルテチウム(Lu):触媒としての使用は検討されているが生産性や価格面から工業的な実用は殆どない。

希土類磁石の種類

1950年代以前はフェライト磁石やアルニコ磁石、白金コバルト磁石など希土類元素を使わない酸化物や金属間化合物の磁石が発明、実用化されてきました。20世紀に入り遷移金属の中でも電子配列の3d軌道に特徴的な配列を持つ鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および電子配列の4f軌道に特徴的な配列を持つ希土類元素は大きな磁気モーメントを持つことが判り、これらを組み合わせるとより強い磁石にできると考えられ研究が進められました。そして、1969年にサマリウム(Sm)とコバルト(Co)から成るサマリウム・コバルト磁石、1983年にはネオジム鉄ボロン(NdFeB)磁石、1990年にはサマリウム鉄窒素(SmFeN)磁石が発表され工業化に至っています。

サマリウムコバルト磁石(サマコバ磁石)

サマリウムコバルト(SmCo)磁石[俗称:サマコバ磁石]には、Sm1Co5の化合物構造(俗称:1-5系サマコバ磁石)を有する磁石と、Sm2Co17の化合物構造(俗称:2-17系サマコバ磁石)を有する磁石があります。サマリウムの代わりにプラセオジム(Pr)やセリウム(Ce)を用いたPrCo5磁石やCeCo5磁石も研究されましたが保磁力の大きさや高温域での使用可否の目安となるキュリー温度(Tc)が高いということでSmCo5磁石が焼結磁石、ボンド磁石として工業化されました。1-5系サマコバ焼結磁石の最大エネルギー積は120~160kJ/m3(16~20MGOe)とそれまでの白金・コバルト(PtCo)磁石が持つ95kJ/m3(12MGOe)を超え、かつ安価な磁石として希土類磁石の先駆けを築きました。
しかし、その後誕生した2-17系サマコバ磁石は最大エネルギー積が200kJ/m3(25MGOe)を超えるより強力な磁石が少ないサマリウム(Sm)量で実現され、それまでの1-5系サマコバ磁石にとって代わり現在でも200℃を超える高温環境や温度変化・腐食や錆を嫌う用途などで使われており、特にセンサ用途で多く使われています。

ネオジム磁石

1983年に、液体急冷法(メルトスピニング法)と粉末焼結法の各方法によるネオジム鉄ボロン磁石が異なる企業から発明・発表されました。前者は樹脂と混合してプレス成形された圧縮成形ボンド磁石としてハードディスクドライブ(HDD)のスピンドルモーターで需要が急拡大、後者も焼結磁石としてHDDのヘッドアクチュエーター用途で需要が拡大しました。ネオジムの焼結磁石は、更にエアコンのコンプレッサー用途、医療のMRI用途、ハイブリッドを含む電気自動車(EV)のメインモーター、風量発電機などこれからの地球温暖化対策のキーマテリアルとして今後も需要が伸びていくことが予測されています。

当社の希土類磁石製品

当社はこれまでサマコバ磁石粉やそのボンド磁石、ネオジム鉄ボロン磁石原料など希土類磁石の発明・発展と併せて独自の希土類合金製造方法を応用して研究開発および工業化を進めてきました。近年は、1990年にネオジム鉄ボロン磁石の特性を潜在的に凌ぐ特性を持つ材料として発明されたサマリウム鉄窒素(Sm2Fe17N3)磁石材料を中心に開発・量産化を進めてきました。サマリウム鉄窒素は高温での焼結過程で窒素(N)が解離して保磁力が著しく低下するため工業的に焼結磁石化には至っていませんが、ボンド磁石としてはネオジムやコバルトを使わない高特性の磁石材料です。当社はサマリウム鉄窒素材料を工業的に量産する数少ないメーカーで、加えてボンド磁石に関する知見も長年蓄積してきているメーカーです。当社サマリウム鉄窒素磁石(以下、「SFN」磁石)に関する詳細は、製品ページや事例などをご覧ください。また、当社の希土類磁石製品については下記よりご覧ください。
希土類磁石材料|X-MINING|住友金属鉱山株式会社

最終編集日:20230725

Take part in X-MINING 各種お問い合わせ

X-MININGは、住友金属鉱山とあなたで新たな技術の創出や課題の解決に取り込むプロジェクト。お気軽にお問い合わせください。

Materials 材料製品一覧