近赤外線吸収材料
Near-Infrared Absorbing Materials
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電気の力で抗菌効果を発揮する生分解性繊維素材「ピエクレックス」を題材に環境に貢献する2社の想いを紐解くX-TALK。【Part 2】では、両社の共創の可能性を探りつつ、これからの開発への決意をそれぞれが語ります。
「ピエクレックス」の開発背景は【Part1】で紹介をしております。
【Part1】を見る
玉倉 住友金属鉱山さんのSOLAMENT®も、環境に対して非常に大きな可能性を秘めた素材として注目させていただいています。
東福 当社は創業以来鉱山開発や金属製錬をなりわいとしてきましたが、誤解を恐れずにいえば、カーボンニュートラルやサステナビリティなどとはあまりそぐわない企業イメージがあります。SOLAMENT®の開発の根底には、環境問題をはじめとする社会課題に対してそうしたマイナスの要素をプラスに変えていこうという意識があります。
矢野 そもそも我々のビジネスは、環境や社会にどうしてもネガティブなインパクトを与えてしまうビジネスです。企業としてこの時代を生き抜くためには、このネガティブな面を低減し、さらにプラスに変える取り組みが欠かせません。
しかし、当社事業の内、資源や製錬事業においては技術的にも難しく、「プラスにするのではなく、プラスマイナスゼロにする」という考え方が主流でした。そんな状況を変え、さらにポジティブな影響を与えることができるのがSOLAMENT®だと私は確信しています。
東福 SOLAMENT®の現在の活用方法の一つは、アパレルへの展開です。素材がもつ近赤外線吸収・発熱効果により、軽くて薄い生地でも、非常に温かく、優れた肌保護や防透け機能を有する衣服を作ることができます。
共創で切り拓く繊維革命 SOLAMENT®の活用:テキスタイル編 | X-MINING|住友金属鉱山株式会社また、農業の分野においては被覆資材(ビニールハウスなど)への展開を進めています。夏場のハウス内の気温は60℃以上になる場合もあり、生産者は日々、過酷な労働環境に置かれています。そこにSOLAMENT®を活用すれば、ハウス内の温度の上昇を和らげ、人も作物も守ることができます。
農業のビニールハウスを変える。 SOLAMENT®を使用した遮熱シートの開発で温度を下げる | X-MINING|住友金属鉱山株式会社さらには、太陽光の分光分布(光合成に必要な光のバランス)を制御することで、作物の収量が改善されるのみならず、品質(形状やおいしさ)を改善することが可能となります。SOLAMENT®がさまざまな社会課題に対して世界中から共感をえるための実現可能なソリューションを導き出すために、さまざまな組み合わせを問うているところです。
ただ、技術者としては今のような展開ができるとはみじんも思っていませんでした。技術者は「よいものを作れば売れるはず」と思いがちですが、それはあくまで技術者のエゴであって、世界が求める価値や困りごとに共感できていないことも多いですよね。私も、まさかSOLAMENT®がアパレルや農業に活かせるとは思いもしませんでしたから。
つまり、SOLAMENT®はいつの間にか、技術者である私の手から離れたところでブランド化されつつあるんです。大きな可能性が見えつつある今こそ、ピエクレックスのような素材との共創を図りながら、ブランド力や知名度をもう一段階高めていきたいと思います。
玉倉 我々は、ピエクレックスをアパレルブランドにしたいわけではなく、唯一無二の素材としてのブランディングを考えています。そのためにも、今はピエクレックスの技術に他社様も含めたさまざまな技術をどんどん取り入れているところです。SOLAMENT®もその一つになりえるだろうと考えています。
たとえば、ピエクレックスは温度が上がるとより効果的に分解しますので、発熱性のあるSOLAMENT®と融合させれば、より効率良くたい肥を作れるようになるかもしれません。そういった、双方の素材をさらに飛躍させるような共創ができるといいですね。
東福 私も、ピエクレックスは私が考える将来のビジネスとの親和性が高いと考えています。SOLAMENT®の機能をお使いいただくことで、ピエクレックスの技術や玉倉社長の想いをより伝えやすくなるのではないかと思います。
今はまだP-FACTS(ピーファクツ)もSOLAMENT®も世界中で広く知られているわけではなく、双方とも、ブランド認知・浸透領域から、ようやく社会実装の領域に入ろうとしてる段階だと思います。互いにブランド確立を進め、いつか、『P-FACTS×SOLAMENT®』というブランドコラボレーションが実現する日がくればいいなあ、と思っています。
矢野 サステナビリティの分野は、巻き込む人たちが多いければ多いほど、取り組みのスピードが増しますからね。違う立場の人や企業が共創することはとても重要なことだと思います。
玉倉 おっしゃる通りです。今の時代、1社で事業が完結するまで世の中は待っていてはくれません。日本人は「開発は時間がかかるもの」と思いがちですが、中国やアメリカの開発スピードは非常に速く、日本人が10年でやろうとすることを3年で実現するようなイメージです。そのスピードに1社で対抗できないのであれば、すぐにパートナーシップを結ぶべきだと思います。
東福 そして、それが思いもよらないパートナーシップであればあるほど、よりインパクトを与えられますよね。当社や村田製作所さんがアパレルや農業と結びつくことをイメージできる人はそうはいないと思います。それもまたブランディングになるのだと思います。
矢野 人材の確保という点でもサステナビリティに貢献しているという企業ブランディングは重要です。現在、日本の学校では、SDGsに関する教育が小中高に取り入れられています。その影響から、環境、社会に貢献できる魅力ある企業で働きたい、自分たちも貢献したいと思って彼らは社会に飛び出してきます。それを知らないままでいることは、企業にとって非常に危険なことです。今の日本企業において一番の課題ともいえる人材不足の解決にもつながりますので、ぜひ取り入れていくべき発想であり、人材の確保ができてこそ開発のスピードも上げていけるのだと思います。
玉倉 私が今、経験も含めて思うのは、環境への取り組みは決してきれいごとでは語れないということです。わかりやすくいえば、環境で儲かるようにならなければならない。環境ビジネスに必要なことは、何より儲けることだと思うんです。早い段階で黒字化し、どんどん利益を出して、その利益を、環境を考える社会を育てるための原資にする。そんなふうにとらえたいなと。環境に貢献する社会風土を作りつつ、我々は責任を持って環境で儲けていく。そして、それを続けていく。これが今、私がキーワードとしているところです。
東福 カッコいいですね。「儲けに責任持つ」ということはなかなかいえないですよ。
玉倉 社会貢献はボランティアとは違いますから。まずは売上を拡大して、損益分岐点を超えて、しっかり会社に認められて、そこで初めて事業も社会貢献も継続していける。そのことを常に意識しておかないといけません。
私がこういう発想ができるようになったのも、環境にお金を払うことが当たり前の時代がようやく来たからです。環境によいことをやればお金がもらえて、そのお金を回せば、さらに環境に貢献できる。この循環をやり遂げたいんです。
矢野 ピエクレックスもSOLAMENT®も衣食住の「衣」に関わっていますが、衣食住を整え、生活の質を向上させることは、社会課題の解決につながるものです。SDGsの考え方も、衣食住で満足できればみんなが幸せになるというところにあるわけですが、おそらく今まで、BtoBの企業は経済的に発展することがゴールになっていて、人の幸せというところにあまりフォーカスを当ててきませんでした。経済的発展の先に人の幸せがあるという考え方をゴールに見据えれば、儲けも大切だ、儲けが社会貢献になるんだという考えにつながっていくのかなと思います。
東福 創業430年という住友金属鉱山がなぜこれほど長きにわたって生き続けることができたのか。私は、常に時代ごとの環境変化に順応してきたからだと思っています。戦争や災害、不況など凄まじいまでのビジネス環境変化が幾度となく訪れたでしょう。そのたびに、自らを大きく変えてきたからこそここまで続いてきたのだと思います。
近年は、需供バランスは大きく変化していて、過去の大量生産・消費から、今は需要主導時代に変貌しています。顧客の志向、価値観はすっかり様変わりしていて、顧客に選ばれない限り売れません。VUCA時代とも呼ばれる現代ではもはや、1社が利益を独占する時代ではなくなりました。共創によって世界が共感するような仕掛けを作っていかなければ、当社も生き残ってはいけないでしょう。そのことを忘れずに、金属資源の会社がSOLAMENT®を手がけるという意味や価値を示していきたいと思っています。
玉倉 私がピエクレックスを通じて環境への貢献を実感できるまでには、おそらくさらに10年~20年はかかると思います。本当に根付く時代が来るのは私がいないくなってからでしょうし、本当に根付いていくためには、今年よりも来年、来年よりも再来年という形で儲かるビジネスにしていく必要がある。それも、我々だけが儲かるのではなく、我々のパートナーさんたちもしっかり儲かっていくことで、初めて経済合理性が生まれ、10年、20年、30年と続いていくのだろうと思います。
すでにある程度の方向性を導き出すことはできてきたので、もう自分がいなくなってもうまくいくとは思いますが、もうちょっと会社にいさせてもらい、楽しみたいです。
「X-MINING(クロスマイニング)」は、住友金属鉱山のDNAのもとに新たに始まる、未来を見据えた新しい共創のかたちです。
日本を代表する資源製錬会社の一つ住友金属鉱山には、積み上げた独自の技術と素材力があります。その技術や素材力も今や私たちの手の中でのみ守り育てる時代ではなくなりました。ならば、それらを有効に活用しイノベーションを実現するにはどうすべきか。その答えを共に探すパートナーと技術の創出や課題の解決に取り組むプロジェクトが「X-MINING(クロスマイニング)」です。
本ウェブサイトでは、材料の機能や技術、SDGsに貢献するソリューション事例など幅広く紹介します。当社製品と皆様のアイデアを”共創"(クロス)させ、社会にインパクトを与える新たな価値を“掘り起こすこと”(マイニング)を目指します。
X-MININGのイノベーションの
起点となる
住友金属鉱山の材料製品を紹介します。