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X-TALK Vol.11 【Part 1】 鉄ガリウム磁歪合金単結晶が拓く給電型センシングデバイスと産業応用の可能性

非常に微小な振動から電気を得られるため、老朽化したインフラや工場設備の危険性を検知するなど、さまざまな分野での活用が期待されている振動発電デバイス。関西大学では、その技術を応用し、橋梁の老朽化をいち早く検知できる給電型センシングデバイスの開発に取り組んでいます。

住友金属鉱山では、関西大学システム理工学部機械工学科の小金沢新治教授に、独自に開発した単結晶材料「鉄ガリウム磁歪合金単結晶」を提供し、その研究活動をサポートしています。社会課題の解決に役立つ給電型センシングデバイスの研究について、また産学連携の価値について、小金沢教授と語り合いました。

鉄ガリウム磁歪合金単結晶とは
大きな磁歪量を持ちながら延性が高く、割れにくい性質を持つ磁歪材料。
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対談者プロフィール

橋梁の老朽化を探るデータの収集に振動発電を応用

――小金沢先生が給電型センシングデバイスの研究に取り組んだきっかけを教えてください。

小金沢 私は今、自動車が橋梁を通行する際の振動によって電気を発生させ、その電力で橋の老朽化を診断するセンシングデバイスの研究・開発をしています。そのデバイスにおいて振動を電気信号に変換する部材として、住友金属鉱山の鉄ガリウム磁歪合金単結晶を使っています。

関西大学に来る前は民間企業に勤務し、センサーやアクチュエーターなどの研究開発に携わっていましたが、その流れのなかで振動発電についても研究していました。大学に来てからも振動発電の研究を続けていましたが、2019年頃、ある道路メンテナンス会社の方が「橋梁の健全性を探る分野に振動発電が応用できるのではないか」と興味を持ってくれて、今に続く研究開発がスタートしました。また、当時の時代背景※として、道路や橋梁といった交通インフラの耐久年数が社会問題としてクローズアップされていたことも大きな要因でした。

※高度経済成長期に集中的に整備された日本の交通インフラは2010年代から一斉に建設から50年を超え、2012年12月に起きた中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を最大の契機に、その老朽化が社会問題としてクローズアップされた。2013年には道路法が改正され、すべての橋梁やトンネルについて5年に一度の近接目視点検が義務化。しかし、近年はメンテナンス財源や技術者の不足が重なり、交通インフラの維持管理が課題となっている。

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私が感慨深いのは、当社が鉄ガリウム磁歪合金単結晶の開発に取り組み始めた時期と、小金沢先生が振動発電の研究に取り組み始めた時期が近いことです。当社が鉄ガリウム磁歪合金単結晶の開発に乗り出したのは2017年、私がこの開発に参画したのが2018年、鉄ガリウム単結晶の大型化を開始したのは2020年のことです。つまり、ほぼ同時期にそれぞれが鉄ガリウムの可能性に着目していたことに、浅からぬご縁を感じています。その後、当社の技術企画部門が先生の研究に着目し、初めて直接お話をさせていただいたのは2021年3月でした。当時はまだコロナ禍だったこともあり、オンラインでのご挨拶でした。

単結晶ならではの強度で橋梁の大きな圧力にも適応

小金沢 泉さんとお会いする以前は、ある商社からターフェノールDという磁歪材料を購入し、デバイスに使っていました。しかし、強い振動がかかるとすぐに割れてしまううえ、1本2万円と高額でした。さらに、実験用にサイズをカスタマイズしようとすると数百万円もの製造費がかかると言われ、使用を断念していました。

橋梁の振動では、大きなトレーラーなどが通った場合、最大で百数十MPa(メガパスカル)という非常に大きな圧力がかかることもあります。普通の金属なら割れてしまっても仕方ないレベルの圧力ですが、大きな負荷がかかるたびに材料が割れてしまっていては開発費がいくらあっても足りません。耐久性の高い材料でありつつコストが抑えられる材料を探すなか、絶妙なタイミングで住友金属鉱山さんからご連絡をいただきました。

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高橋 センシングデバイスは具体的に橋のどの部分に設置するのでしょうか?

小金沢 橋には、道路と橋脚の間に「支承(ししょう)」と呼ばれる部材があります。その支承の近くにセンサーを設置しています。

私はセンサーを設置した橋を実際に見させていただいたことがありますが、支承にはものすごい力がかかっていることがわかりました。それを踏まえ、センシングデバイスに利用する鉄ガリウム磁歪合金単結晶も、いろいろな試みを重ねて耐久性を追求してきました。

高橋 単結晶であることによる高い強度が、鉄ガリウム磁歪合金単結晶の一番の強みです。複数の結晶が混ざった多結晶合金の場合、その境界部分を起点に合金が割れてしまうことがあります。しかし、単結晶であればそうした起点が生まれず、強い圧力にも耐えることができるという仕組みです。

ただ、単結晶化は大きくなればなるほど育成のハードルが上がります。単結晶化では温度管理が非常に重要ですが、大きければ大きいほど内部と外部の温度差が出やすいからです。いかに強く、また、いかに大きく作るかの研究は、現在も継続的に重ねています。

高い材料特性を確保しながら大きさや形状のニーズにも対応

小金沢先生からは、これまで育成が難しかった大きいサイズの材料のご要望もいただきました。また、我々はもともと板状の材料として単結晶を開発しましたが、小金沢先生は円柱の材料を必要とされていたので、その加工技術も必要でした。最近は研究の成果もあり、より大きく、より性能が良い円柱状の単結晶材料を、より素早く提供できるようになってきています。

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小金沢 角柱状に作った材料を最終的に円柱状に削っていただいているわけですね。

その通りです。加工を施したうえで、いかに組成が均一な材料を作れるか。その研究も継続しています。とりわけ小金沢先生の研究では上からガツンと圧力がかかるので、組成が均一でない場合、柔らかいところだけが先に変形してしまうようなことも起こり得ます。現時点でも材料特性として決して悪くないものが開発できていますが、今後はさらにその特性を伸ばせるだろうと私は思っています。

小金沢 材料の特性次第で研究のスピードも変わります。鉄ガリウム磁歪合金単結晶のおかげでセンシングデバイスの研究スピードも上がりました。特性のさらなる向上に期待しています。

【Part 2】産学連携とサプライチェーンの構築で、給電型センシングデバイスを社会実装へ。

【Part 2】では、センシングデバイスの社会実装に向けて必要な産学連携の取り組みとサプライチェーンの構築について語り合います。【Part2】を見る

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「X-MINING(クロスマイニング)」は、住友金属鉱山のDNAのもとに新たに始まる、未来を見据えた新しい共創のかたちです。
日本を代表する資源製錬会社の一つ住友金属鉱山には、積み上げた独自の技術と素材力があります。その技術や素材力も今や私たちの手の中でのみ守り育てる時代ではなくなりました。ならば、それらを有効に活用しイノベーションを実現するにはどうすべきか。その答えを共に探すパートナーと技術の創出や課題の解決に取り組むプロジェクトが「X-MINING(クロスマイニング)」です。

本ウェブサイトでは、材料の機能や技術、SDGsに貢献するソリューション事例など幅広く紹介します。当社製品と皆様のアイデアを”共創"(クロス)させ、社会にインパクトを与える新たな価値を“掘り起こすこと”(マイニング)を目指します。

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