耐酸化ナノ銅粉 【開発品】
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スマートフォンや自動車、家電といった電子機器の高性能化が進み、製造技術の高度化が求められる現代において、部品を低温で接合する「低温実装技術」の重要性が高まっています。その中核を担う基盤プロセスとして注目されているのが、粉末材料を熱で結び付ける「焼結」です。材料を完全に溶かさずに接合・成形できるこの技術は、エネルギー消費や材料ロスを抑えながら、部品の性能や信頼性を高められる点に特長があります。
カーボンニュートラルや資源制約への対応が企業経営の重要課題となるなか、製造プロセスの効率化や省資源化に直結する手段として、焼結への関心は高まりつつあります。工程の簡素化や軽量化、高耐久化などに貢献できることから、幅広い産業分野で、改めて戦略技術として位置付け直す動きも出ています。
部品製造から電子材料、エネルギー分野まで応用が広がる焼結は、持続可能な社会を支える“見えにくい基盤技術”として存在感を強めています。本記事では、焼結のメリットと今後の展望について解説します。
焼結は、電子・電気分野における導電層や熱伝導層、チップ接合部といった実装領域に加え、フィルターなどの多孔質材料、自動車のギアに代表される粉末冶金部品など、極めて幅広い用途で活用されています。スマートフォンや車載機器、産業装置などの内部で重要な役割を担っており、「社会を支える技術」と表現しても大げさではありません。
焼結は先端分野に限定された特殊技術ではなく、粉末から加工し、機能や性能を安定的に量産するための基本プロセスでもあります。材料特性と製造プロセスを同時に設計できる点は、量産製品開発において大きな意味を持っています。
これまでの焼結は1000℃以上の高温環境を必要とした工程が多く、周囲の部材の耐熱性などにより使用できる用途は限られていました。しかし、近年注目を集めている「低温焼結」は異なります。焼結の技術の課題であった温度を低温化することで、焼結の優位性を維持したまま新たな可能性を見出すことができるのです。
近年、多くの企業が電子機器の高機能化や電動化の進展、資源制約や環境負荷低減などの課題に取り組んでおり、製造プロセスそのものの見直しが進められるケースも増えています。
そのなかで低温焼結は、機能性・資源効率・量産性といった要素を同時に設計できる点で、製品競争力を支える製造技術として改めて注目されているのです。
焼結の特徴は、材料を完全に溶融させることなく、粉末同士を結合させて機能を引き出せるという点にあります。
このプロセスにより、高い導電性や熱伝導性といった金属の特性を維持しながら、印刷や成形など柔軟な加工方法と組み合わせることができます。
従来の切削加工や溶接中心の製造では、形状や材料配置に制約が生じやすく、性能向上と量産性の両立が難しい場面も少なくありませんでした。しかし、焼結を前提とした設計では、部品構造の自由度が高まり、機能集約や軽量化、部品点数削減といった設計最適化を進めやすくなります。

さらに、低温焼結は工程短縮や電力使用量の削減、省水化といった観点から、製造プロセスの環境負荷低減にも寄与する可能性があります。とくにプロセス温度の低温化は省エネルギー価値が大きく、カーボンニュートラルへの対応を進める企業にとって重要な意味を持ちます。結果として歩留まり改善や総コスト低減につながる可能性もあり、製品競争力の向上に直結する技術といえます。
こうした焼結の価値をさらに引き出す可能性を持つ材料の一つが、住友金属鉱山が開発する「耐酸化ナノ銅粉」です。
焼結は使用する粉末材料の特性によって、その適用範囲や性能が変化します。なかでも、近年注目されているのが、微細な銅粉の表面を保護することで酸化しにくくした耐酸化ナノ銅粉です。
銅は高い導電性と熱伝導性を持つ一方で酸化しやすく、微細化すると酸化が著しく早まる課題がありました。耐酸化ナノ銅粉はこの点を克服し、低温焼結材料としての実用性を高めた素材です。
「焼結」と「耐酸化ナノ銅粉」の組み合わせには、どのような可能性があるのでしょうか。
ポイントは大きく4つあります。
ナノサイズの微細銅粉は、比較的低い温度で焼結しやすいという特性があります。粒子が微細になるほど表面積が大きくなり、表面エネルギー(物質の表面が持つ不安定さ)を低減しようとする駆動力が高まるため、粒子同士の結合が促進されるのです。その結果、220℃以下での焼結が可能となり(低温焼結性)、従来は熱負荷の観点から適用が難しかった樹脂材料やフィルム基材にも、適用の余地が広がります。
これは、単に「低温で作れる」という話ではありません。フレキシブル電子や軽量モジュール、小型デバイスのように、基材側の熱耐性が設計制約になりやすい領域では、プロセス温度を下げられること自体が設計自由度の拡大につながります。特に、熱に弱い材料を使いたくても製造条件が障壁になっていたケースでは、この低温焼結性が有力な突破口になり得ます。
耐酸化ナノ銅粉には、焼結後にしっかりした“バルク(かたまり)”に近い状態を形成しやすいというメリットがあります。焼結によって低温で加工できることだけではなく、加工後に粒子同士が結合し、連続した構造を形成することで、導電性、熱伝導性、耐熱性といった特性が高まりやすくなることも重要なポイントになります。
一般に、低温で扱いやすい材料は、完成後の耐熱性や信頼性で不利になると見られがちです。しかし「焼結×耐酸化ナノ銅粉」という組み合わせでは、「成形・実装の段階では低温で扱える一方、焼結後には金属らしい機能を発揮しやすい」というバランスを狙えます。
銀との比較においても、銅の経済性や物性のバランスが改めて注目されています。導電材料としては、長年にわたり銀が標準的な選択肢の一つでした。銀も粒子を微細化すれば低温焼結が可能であり、実際にその特性を生かした用途は広く採用されてきました。
しかし近年、銀価格の上昇は設計・調達の両面で無視できないテーマになっています。背景には、太陽光発電、電子機器、EV、通信関連などでの産業用途拡大があります。銀は高い導電性を持ち、代替しにくい用途も多いため、工業需要が価格を下支えしやすい構造にあります。
こうしたなかで、銅は銀に次ぐ高い導電性・熱伝導性を持ちながら、相対的に安価で、供給面でも扱いやすい材料として再評価されています。酸化しやすいという弱点を克服した耐酸化ナノ銅粉であれば、酸化という課題を抑えながら、銅本来の高い導電性・熱伝導性と低温焼結のメリットを両立することが可能です。つまり、銀の単純な代替という位置付けではなく、性能・コスト・供給安定性を総合的に見直すなかでの、現実的な選択肢として注目されています。
耐酸化ナノ銅粉を使うことで、これまで高温前提だった製造プロセスの温度設計そのものを見直せる可能性があります。従来、銅を使ったプロセスでは、その高い融点が一つの前提条件になってきました。
そのため、製造工程全体が高温プロセスに引っ張られ、設備負荷、エネルギー消費、基材選択の制約などが生じやすくなります。
これに対し、耐酸化ナノ銅粉を用いれば、銅の機能を生かしながら、より低い温度条件でのプロセス設計が可能になる余地があります。これは、工程短縮や電力削減といった製造面の価値に直結します。加えて、熱履歴を抑えられることで、周辺部材へのダメージ低減や歩留まり改善につながる可能性もあります。
接合材としての観点では、はんだとの比較も重要でしょう。次世代の半導体の使用による電子機器の高出力化が進むなかでは、動作時の発熱により接合部へかかる熱負荷が増しています。
はんだは一定の温度領域で軟化・溶融の懸念があり、高温環境下での信頼性確保が課題となる場面があります。その点、焼結によって形成される金属接合は、耐熱性と放熱性の両立を図りやすく、高発熱デバイス向けの実装技術として期待が高まっています。
つまり、低温焼結型の耐酸化ナノ銅粉は、「加工時は低温で扱いたい」「完成後は高い耐熱性・放熱性がほしい」「コストや供給リスクも見直したい」といった、現場で分断されがちな要件を一つの設計テーマとして束ね直すことのできる材料だといえます。
低温実装と高性能化を同時に求められる現在、材料と製造プロセスを切り離して考えることは難しくなりました。焼結を前提とした設計は、プロセス温度、信頼性、コストといった複数の要素を横断的に最適化するための新たな選択肢となるでしょう。
耐酸化ナノ銅粉は、その設計自由度をさらに広げる要素となります。材料技術と製造プロセスの融合は、製品性能だけでなく開発スピードや量産戦略にも影響を及ぼすと考えられます。「焼結×耐酸化ナノ銅粉」という戦略は、次世代デバイスの量産競争力を支える基盤として、今後一層重要性を増していくでしょう。今後は発熱密度の高い電子機器やデータセンター関連機器など、高性能化が進む分野での活用も見込まれます。
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