住友金属鉱山は、熱伝導フィラーを高充填する技術と、高充填でありながら流動性を維持し印刷性を調整する技術を組み合わせて、熱分解反応の抑制された有機物を用いることで非シリコン系高耐熱熱伝導ペーストを実現しました。
目次
住友金属鉱山は「シリコンフリー系の耐熱高耐久の絶縁ペースト「放熱グリース(熱伝導グリス)」を開発
材料の特性
放熱グリースは、高充填されたペーストでありながら印刷に必要な流動性を保持しています。
特にシリコンフリー系の放熱グリースは、耐熱性という課題がありましたが、住友金属鉱山開発品「放熱グリース」は、従来のシリコンフリー系放熱グリースの課題であった耐熱性を特殊な有機物を用いることで克服し、更に従来品に比べて約20倍の耐久性を実現しました。
製品写真
シリコンフリー系で初のTIM
耐熱性・耐久性・塗布性を向上
高い耐熱信頼性が求められているTIM製品とは
部材から発生する熱を効率よく伝えることは、熱の有効利用を含めたサーマルマネジメントのキーテクノロジーです。これらの熱を放熱フィン等に効率よく伝達させる材料をTIM(Thermal interface material)と呼びます。
近年のSICパワーデバイスでのエネルギー密度上昇や5G通信などでのMPUの処理量の増加は、さらなる熱量の増加と高温化を招いています。そのためTIMそのものも、より高い耐熱信頼性が求められています。
熱を効率良く伝える材料であるTIM製品の種類
TIM製品には、グリース、シート、接着剤、フェイズチェンジマテリアル(相変化材料)、ギャップフィラーがあり、SMMでは、グリースを中心に開発を行っております。
TIM製品の用途
TIM製品の一般的な用途として、主に電子機器の放熱があげられます。
パソコンのCPUケースやハイブリッド車の電子デバイスなど、電気抵抗によって生じた熱を排出できるような箇所に使用されます。
過剰な熱は電子機器の性能を低下させ、故障の原因となるため、TIM製品を用いることで放熱を促進することが目的です。
シリコーン系・シリコンフリー系放熱グリースの特徴
放熱グリースは大別すると油分にシリコーン(ポリメチルシロキサン等のシリコーン油)を使用したシリコーン系放熱グリースと鉱油・炭化水素系の合成油(エーテル・エステル・PAO等)を用いたシリコンフリー系の放熱グリースがあります。市場での大半はシリコーン系の放熱グリースが使用されています。
シリコーン系放熱グリース
シリコーン系放熱グリースの特徴は、第一に化学的に安定性が高いことが挙げられます。金属と接触する部分で絶えず加熱と冷却が繰り返される環境下でも、自身も劣化しにくくほかの部材に悪影響を及ぼしにくい優れた性質を持ちます。第二の特徴は極低温から高温までの粘度の変化が他の油脂類より極めて小さいことにあります。加熱・冷却を繰り返される発熱・放熱される界面においてグリースの粘性変化が小さいことは、温度差に伴う2面間の変形に追随する特性として優れています。シリコーン系の放熱グリースは油分に使うシリコーンの優れた特性を生かした製品群と言えます。
とはいえ実用上はこのシリコーンオイルの優れた特性が裏目にでることもあります。シリコーンオイルは化学的に安定であり、他の薬品類と相溶性がありません。そのため使用後の洗浄に苦労するなどの不満も聞きます。開発の立場での問題としては、ほかの薬品類と相溶性がない、つまり特性を向上させるための添加剤がほとんどなく、製品設計としての自由度にかける点があげられます。たとえば放熱グリースはフィラーを増加させれば熱伝導率は上がりますが、かつ粘度も増加するため塗りにくくなります。その対策として通常であればフィラーの濡れ性を向上させる添加剤や分散剤を使用して高充填率と低粘度の両立を図りますが、シリコーン油には対策できる添加剤がごくわずかです。そのため、高熱伝導率で塗りやすい製品という点ではシリコーン系は不利になり、使用できるフィラーにも制限があります。
シリコンフリー系放熱グリース
さて、シリコンフリー系の特徴および欠点はまさにこのシリコーン系の特徴の裏腹といえます。たとえば、リレーの配置の自由度向上のためにシロキサンフリーを求める声があります。高熱伝導率で粘度の低い放熱グリースを求める声があります。印刷装置・光学機器など加熱時のシリコーン化合物の蒸気を嫌う用途もあります。以上のようにシリコンフリー系を求める用途に適用するため、エステル油、ポリαオレフィン等の炭化水素系合成油を基材としたシリコンフリー系の放熱グリースという分類があります。シリコンフリーであれば全ての用途で使えそうにも思えますが、現状では放熱グリースの全使用量の1割にも達しません。シリコンフリー系が拡大できない最大の理由は、従来品では耐熱性と化学的安定性でシリコーン系を超えることができなかったためです。シリコンフリーでは耐久性がもたないため、様々な問題もあるもののシリコーン系の使いこなしで対応しているのが放熱グリースの現状のようです。
シリコンフリー系放熱グリースの課題「耐熱性」を向上できるか?
炭化水素系の有機物でシリコーン系並みの耐熱安定性を確保することは技術的ハードルの高い課題です。しかし、現状のシリコンフリー系放熱グリースの「耐熱性」をみると組成設計上改善の余地はありそうです。なお、ここで言及する「耐熱性」とは、定義の比較的あいまいなことばで、言い換えれば加熱の温度・時間に対して「求められた特性が維持できる期間」をさします。そのため特性が温度と時間とともに劣化する機構を理解し、熱に対する劣化を抑制すればより「耐熱性」に優れた製品とすることができます。
熱劣化の原因となる有機物の酸化分解を防ぐ「シリコンフリー系」~住友金属鉱山の放熱グリース
住友金属鉱山では、有機物の酸化分解が熱劣化の原因になっていると考え、有機物の酸化劣化機構、グリースの流動性の劣化機構に着目し、その機構各段階の反応を抑制する各種成分の研究と最適化による製品開発を続け、従来のシリコンフリー系放熱グリースを大幅に上回る耐熱性を実現しました。
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