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プリンテッドエレクトロニクスとは?用途や実用例、今後の可能性について

電球のイラスト

環境問題の深刻化と資源の有効活用が叫ばれる現代において、持続可能な社会の構築が急務となっています。一方でAIやIoT、ビッグデータの活用など高度情報化社会の発展のために、ますますエレクトロニクス産業の需要が高まっています。各種電子デバイスは、装置内部で基板に配線が形成されますが、その配線プロセスはエネルギー消費量が多く、環境への負荷が高い工程です。

需要がますます伸びるデバイスを地球環境にやさしく、持続的に生産するためには従来の製造プロセスを見直し、より環境に優しく、資源を有効活用する技術の開発が進められており、「プリンテッドエレクトロニクス技術」はそのニーズに応える技術として期待されています。

この技術は、従来の電子デバイス製造方法に比べ、エネルギー消費を削減し、軽量で柔軟な電子デバイスの製造を可能にします。特に、樹脂フィルムなどに適用されるプリンテッドエレクトロニクス技術は、その設計自由度と環境への配慮から、さまざまな分野での応用が期待されています。

このコラムでは、プリンテッドエレクトロニクスの可能性と、当社が開発を進める錯体インクの重要性について、深く掘り下げていきます。

プリンテッドエレクトロニクスとは?

プリンテッドエレクトロニクスは、ソリッド・フレキシブル基板に対して導電性/半導体/絶縁性インクなどと印刷技術を用いて電子回路やデバイスを製造する先端技術です。現在、電子回路の製造技術、基板全面に材料を塗布した後に不要な部分を薬液で溶かして回路パターンを形成する「フォトリソグラフィ」という手法が主流です。

それに対して、プリンテッドエレクトロニクスは柔軟性のあるフィルム基板などの上に直接電子回路を印刷することで、省資源や省エネルギーによる脱炭素化、軽量化、コスト削減などの利点をもたらし、産業界から高い注目を集めています。

プリンテッドエレクトロニクスが注目を集める背景

IoTイメージ

ITやICTなどデジタル技術の進展とIoT技術の普及が進む中、あらゆるモノの電子化が進み、自動車やスマートフォン、超軽量のウェアラブル端末や折りたためるディスプレイなど、電子機器の形態は産業用・家庭用を問わず、これまで以上に多様化・複雑化しています。

ITやICTなどデジタル技術の進展とIoT技術の普及が進む中、あらゆるモノの電子化が進んでいます。外出先でも遠隔操作できるエアコンやスマートフォンから鍵の施錠・開錠が可能なスマートロック、腕時計や指輪から生体情報を計測するウェアラブル端末などの小型電子機器からディスプレイやMaaSの進展に伴う各種モビリティに適用される大型電子機器まで、電子機器の形態は産業用・家庭用を問わず、これまで以上に多様化・複雑化しています。

プリンテッドエレクトロニクスは、その生産性の高さと基板の柔軟性を活かして、製品の薄型・軽量化・大面積化への対応や、高速・低コストでの生産が可能になります。また、基板に必要な分だけの導電性インクを塗布して回路パターンを形成します。その結果、製造工程が大幅に短縮され、設備投資や材料・エネルギーの消費量を削減できるのです。

プリンテッドエレクトロニクスの技術

プリンテッドエレクトロニクスの技術には、インクジェット印刷やスクリーン印刷など、様々な印刷方法が用いられます。これらの方法により、電子インクや導電性材料を基板上に直接印刷し、従来技術に比べてプロセスを短縮して電子回路を形成することができます。この技術により省エネルギーによるCO2の削減や、柔軟性と生産効率の向上を実現します。

下記コラムで導電性インクについて紹介しておりますので、併せてご覧ください。

【関連記事】導電性インクとは?用途やコストを抑える方法について

プリンテッドエレクトロニクスを利用するメリット

環境負荷低減

従来の製造プロセスと比較して、銅箔や絶縁材料を必要な量だけ有効活用し、工程設備や熱プロセスを経るため、エネルギー削減効果によりCO2の発生を低減することが可能です。

工程短縮によるコストダウン

複雑な製造プロセスが不要となり、生産時間とコスト削減による製品開発に貢献できます。ロール状に巻いた基板を装置に流して印刷を行うRoll to Roll方式も採用できるため、大量かつ高速に電子回路を作れるというメリットもあります。複雑な製造プロセスが不要となり、生産時間とコスト削減による製品開発に貢献できます。

また、紙・フィルム・金属箔などロール状の基盤を装置に流して、加工部を通して再びロール状に巻き取るRoll to Roll方式も採用できるため、枚葉方式と比較すると大量かつ高速に電子回路を作れるというメリットもあります。

柔軟な基板や複雑配線、大面積基板の作製

従来の方法では実現が難しいとされていたフレキシブル基板への印刷や、大面積基板への応用が可能となります。さらに、少量多品種化に対応できるオンデマンドな製造方法であるため新たな製品開発への展開が期待できます。

プリンテッドエレクトロニクスの用途

プリンテッドエレクトロニクス技術は、ディスプレイ、太陽光電池、RFIDタグ、センサーなど、幅広い分野で応用されています。また、少量多品種の電子回路形成にも適しており、カスタマイズされた製品の製造に貢献しています。

ディスプレイ

薄型で柔軟性のあるディスプレイの製造に革命をもたらしています。この技術を用いることで、曲げることができるディスプレイや、ロールアップ可能なスクリーン、透明ディスプレイなど、従来の技術では実現が難しかった製品の開発が可能になります。

これにより、ウェアラブルデバイス、スマートウォッチ、スマートフォン、広告用ディスプレイなど、新しい形状や用途の製品が市場にでています。

太陽光電池

Flexible solar battery on white background. 3D illustration.

プリンテッドエレクトロニクス技術を活用した太陽光電池は、軽量で柔軟な太陽電池の製造を可能にします。これにより、建物の屋根や壁、さらには衣服や鞄など、従来の硬いパネルでは設置が難しかった場所にも太陽光電池を設置できるようになります。また、低コストでの生産が可能であり、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献する事が期待されてます。

RFIDタグ

大量生産が可能で、低コストでの製造が実現します。これにより、物流管理、在庫管理、個品識別など、様々な分野での利用が拡大しています。

また、柔軟な素材に印刷できるため、衣服や書籍、さらには食品パッケージングなど、従来のRFIDタグでは困難だった用途への展開が進んでいます。

 

センサー

スマート社会を実現するために不可欠なセンサーは、エネルギー、ヘルスケア、自動運転、スマート工場、スマートテキスタイルなどあらゆる分野で多種多様なセンサーシステムが必要になってきます。高度なセンサーシステムを構築するためには、高性能で設置自由度の高い、小型軽量で安価なデバイスが求められており、それを実現する技術としてプリンテッドエレクトロニクスもあげられます。

その他 少量多品種に対応できる電子回路形成

プリンテッドエレクトロニクス技術は、少量多品種の製品製造にも適しています。この技術により、カスタマイズされた電子回路の製造が容易になり、小ロットでも高いコストパフォーマンスを実現します。これにより、特定のニーズに合わせたセンサーネットワーク、特殊な用途向けのディスプレイ、個別化されたウェアラブルデバイスなど、多様な製品の開発が促進されています。

また、リジットなプリント配線基板に適用することも可能です。プリント配線板については、当社の関係会社である伸光製作所株式会社で取り扱いがあります。

株式会社伸光製作所のホームページはこちら

プリンテッドエレクトロニクスに活かせる住友金属鉱山の銅粉添加Cu-Ni錯体インク

住友金属鉱山は、高い導電性と安定性を持つ「銅粉添加Cu-Ni錯体インク」の開発を進めています。この導電性材料は、従来の導電材料で課題であった厚膜化に成功し、フレキシブル基板上でも大電流を流せる低抵抗な高性能な電子回路を形成することができます。さらに、厚膜化により大面積化が図られ、太陽光パネルや大型ディスプレイなどへの応用も期待でき、環境配慮型材料として推進することができます。

【製品紹介】銅粉添加Cu-Ni錯体インク

Cu-Ni Complex ink

 

プリンテッドエレクトロニクスの今後の可能性

プリンテッドエレクトロニクス技術の進化は、電子デバイスの製造プロセスを根本から変革し、新たな製品開発を促進します。

環境への配慮と経済性を兼ね備えたこの技術は、持続可能な社会の実現に向けて、重要な役割を果たすと考えられます。

まとめ

プリンテッドエレクトロニクスは、その柔軟性、コスト効率、環境への配慮という特徴を活かし、多様な産業分野での応用が期待される革新的な技術です。住友金属鉱山が開発を進めている 銅粉添加Cu-Ni錯体インクは、フレキシブル基板への応用ができ、プリンテッドエレクトロニクス分野において活用が期待される材料です。

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