表面処理技術は、粉体や基板の機能性材料の性能向上に不可欠な役割を果たしています。分散性の向上から、対候性、密着性、耐酸化性の改善に至るまで、材料そのものが持つ性能を最大限に発揮できるような機能が付加されます。本コラムでは、表面処理の目的や具体的な機能、そして住友金属鉱山の製品事例までご紹介いたします。
表面処理とは?
表面処理は、金属やその他の材料の表面に化学的、物理的な処理を施して、その材料固有の性質を変え、機能を改善、改質する技術です。表面処理技術は、耐久性、耐酸化性、導電性、密着性などの特性を向上させるために利用されています。特に、金属粉体材料における表面処理により、製品への適合性や信頼性が向上し、材料の利用範囲や性能を高める上で重要です。
表面処理のメリットとは
粉体材料や基板材料に表面処理を適用して得られる付加機能を3つご紹介いたします。
耐酸化性の向上
金属粉体材料は酸化しやすく、酸化が進むとその性能が低下します。コーティング処理による表面処理によって耐酸化性を向上させることで過酷な使用環境でも品質保持が可能です。金属粉体材料の表面処理に用いられる材料は銅粉・ニッケル粉や磁石粉があげられます。
電子部品や導電材料として広く利用される銅粉は酸化しやすい材料であり、導電性が酸化により低下いたします。酸化防止膜や有機コーティングを施すことで、酸素や湿気から保護し、耐酸化性を向上させ、これにより、長期間にわたり安定した導電性を維持できます。
磁石粉(例えばネオジム磁石粉)は酸化に弱く、酸化が進むと磁気特性が劣化する傾向があります。金属被膜や有機ポリマーコーティングを施すことで、酸素や湿気から保護し、耐酸化性を向上させ、長期間にわたり安定した磁気特性を維持できます。
分散性の向上と凝集防止
固体粒子と液体を混ぜて作るスラリーは、塗布して使用される場合やスラリーそのものを製品として使用される場合があります。しかし、液中で固体粒子の分散性が悪いと、スラリー中において品質にバラつきが生じ、それが最終製品に影響を及ぼす可能性があります。
固体粒子を液体中に分散させて良好な分散液を得るためには、粒子の凝集体をバラバラにほぐして単独粒子である一次粒子化すること、分散された一次粒子を安定化して再凝集を防ぐことが必要です。表面処理効果により、粒子どうしが電気的あるいは物理的に接近することを防止し、分散性を向上させることができます。
密着性の向上
電子基板において基板と回路や電極に剥がれが生じると、製品への不具合に繋がるため、長期的に信頼できる密着を確保することが重要です。スマホなどで使用されているフレキシブル基板(FPC)や液晶ディスプレイパネルに使用されるCOF基板の材料である銅張積層板(FCCL)材料の製造においても、銅と基材との密着性を向上させることが不可欠になります。
銅張積層板材料は銅表面を化学エッチングやプラズマ処理によって微細構造を付与し、その後に接着剤や樹脂コーティングを施す方法があります。これにより、銅と基材との接触面積が増加し、密着性が向上します。これにより、耐久性や信頼性の高い電子配線板の製造が可能となります。
表面処理に関する住友金属鉱山の製品事例
近赤外線吸収材料
近赤外線吸収材料は建築物や自動車用の採光材(窓材)に応用されておりますが、その特質から屋外で使用されるケースが多く、太陽光・温度・湿度・雨などの屋外の環境に対する耐性すなわち耐候性が要求されます。化学物質によっては空気中の水分などで品質が低下することが知られており、粒子表面に処理を施すことで耐水被膜を形成し高い耐候性を示すことができます。
【製品紹介】近赤外線吸収材料(SOLAMENT®)
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導電性インク
表面処理により、導電性インクの特性を大幅に向上させることができます。導電性インクの金属フィラーに表面処理を施すことで、分散性が向上し、平滑性と連続性を有する導電膜が形成されます。また、膜形成時の反応を制御して表面をNi膜でコートすることで、耐酸化性や、半田付け性を付与するなどニーズに応じた表面に改質することができます。
まとめ
表面処理は、金属粉体材料の特性を大幅に改善するための重要な技術です。耐酸化性の向上、分散性の向上と凝集防止、密着性の向上といった各機能を通じて、製品の品質と性能が向上します。表面処理技術の発展により、金属粉体材料の利用範囲はさらに広がり、さまざまな分野での応用が期待されています。