目次
近年、スポーツ競技会や映画館での盗撮被害が問題となっており、2020年11月、日本オリンピック委員会(JOC)など各スポーツ統括団体が「盗撮対策に乗り出す」と宣言したことは記憶に新しいでしょう。また、議員立法により、映画の盗撮防止に関する法律が平成19年8月30日に施行されましたが、いまだに著作権侵害の事例があとを絶ちません。
そこで本記事では、当社製品を応用した製品を活用した、「近赤外線カメラ」によるスポーツ競技会などでの盗撮被害を防止する取り組みについてご紹介します。
近赤外線とは~定義と利用例
「近赤外線」は、紫外線と同じ太陽光の一つです。太陽光は波長により、赤外線や可視光線、および紫外線の3つに分類され、そのうち、可視光線よりも波長が短いのが紫外線、長いものを赤外線と呼びます。
近赤外線は、波長がおよそ0.7-2.5 µmの電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持つのが特長です。可視光線に近い性質があるため「見えない光」として様々な場所で活用できます。例えば、近赤外線は赤外線カメラや家電用のリモコン、赤外線通信や生体認証の一種である静脈認証などがあります。
近赤外線カメラによる社会問題~スポーツ協議会での盗撮被害と防止
ここまでご紹介した近赤外線は我々の生活で役立つ一方、近赤外線をもとにした、近赤外線カメラを利用した盗撮被害はあとを絶ちません。
2021年に行われた東京五輪では、近赤外線カメラによる女性アスリートの盗撮や性的画像流出問題が話題となりました。特に肌露出の高いユニフォームは盗撮カメラマンの対象となり、写真がインターネットで晒される事態となっています。近年は可視光カメラだけではなく、赤外線カメラを利用してユニフォームの中の下着や身体まで盗撮された事例もあり、年々巧妙な手口が使われることも増えています。
日本陸上競技連盟や日本学生陸上競技連合などの各団体はこの事態を重くとらえ、許可を得た人しか撮影できないエリアを設置したり、競技場内を巡回したりとセキュリティ強化を行うようになりましたが、完全に被害を抑えることはできていません。盗撮被害を重くとらえ、2023年7月13日、撮影罪を規定する「性的姿態撮影等処罰法(略称)」が施行されました。
アスリートのユニフォームを赤外線カメラで透かして撮影する行為は、撮影罪の処罰対象となりますが、弁護士によるとまだまだ課題が残ると指摘。「そもそも着衣の上からの撮影であり、性的な視点とそうでない視点の線引きが難しい」と言われています。
近赤外線の盗撮防止に役立つ住友金属鉱山の近赤外線吸収材料
当社近赤外線吸収材料を使用し、企業が赤外線防透け生地を開発しました。この生地は、近赤外線領域の吸収性に優れた特殊な材料を使用して盗撮の予防対策を実現したものです。
再生可能エネルギーである太陽光を利用した新たな蓄熱保温素材“WarmdArt®(ウォームダール)”を開発。近赤外線の波長を吸収することから、赤外線カメラによる盗撮に対しての防止効果が期待できます。
瀧定名古屋株式会社「NIROL®」
住友金属鉱山の近赤外線吸収材料SOLAMENT®※およびLaB6は、太陽光線の約40%のエネルギーを占める波長、800〜1200nmの光を強く吸収する性質を持っています。
※ SOLAMENT®は、住友金属鉱山が独自で発明し、国内外の特許・商標を所有する近赤外線吸収微粒子CWO®を用いた、太陽光をコントロールする素材テクノロジーブランドです。
CWO®やLaB6は、近赤外線に対する強力な吸収能力を持つ当社が発明した国内外の特許や商標を有するオリジナルの材料です。
アスリートの盗撮に対する近赤外線吸収材料の応用
ファッション業界ではアスリートのユニフォームに関して、機能性よりもデザインを重視していたこともあり、「ファッション性と機能性は相反するもの」といった固定観念が根強く残っている風潮でした。
ですが、近赤外線吸収材料はその高い透明性から幅広いバリエーションの生地や色に展開が可能です。また動きやすさも兼ね備えており、機能性を持ちながらファッショナブルなデザインも採用できるのです。
マネキンを使用した赤外線カメラ撮影による機能試験(撮影試験)
左側生地(一般衣服)に比べ、右側生地(SOLAMENT®使用衣服)は透けないことが分かる
上記の写真は近赤外線吸収材料を利用した衣服での実験の様子です。赤外線カメラで撮影しても一般の衣類(左側)よりも、SOLAMENT®を使用した衣服(右側)の方が、透けていないことが確認できます。
本取り組みについては下記よりご覧ください。
共創で切り拓く繊維革命 SOLAMENT®の活用:テキスタイル編
その他の近赤外線吸収材料の活用
赤外線を吸収する機能をもつ近赤外線吸収材料は、盗撮防止のほかにもさまざまなことに応用できます。
例えば、以下のような活用例があります。
- カメラのノイズフィルター
- あったか素材、速乾素材などの衣料
- 真夏の農業用ハウスの室温上昇を防ぐ
- 大きなガラス窓の建物で室温を快適に保つ
- サッカースタジアムの屋根で明るさを保持しながら熱線のみカット
まとめ
近赤外カメラによる盗撮問題、防止手段として当社近赤外線吸収材料を使用しアスリートのユニフォームの機能性を高めた事例をご紹介しました。
弊社近赤外線吸収材料に関心がございましたら、ぜひ当社までお問い合わせください。
住友金属鉱山の近赤外線吸収材料について詳細を見る