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いま世界では、地球環境の保護や限りある資源の有効活用という観点から、省資源な材料に注目が集まっています。
この記事では、省資源な材料を製品や製造プロセスに利用するメリットを解説いたします。さらに、資源の有効活用や高効率化などの観点から、省資源に貢献している住友金属鉱山の製品ついてもご紹介します。
省資源な材料とは
省資源とは、資源を節約することです。すなわち省資源な材料とは、少量で高い性能を発揮する高効率な材料のことを指します。具体的には、資源を節約するプロセスに貢献できる材料や、性能アップ・代替物となる材料を開拓することで、使用する資源の量を減らします。
なぜ省資源な材料が注目されているのか
近年では、地球の環境悪化を防ぎ、将来の世代も安心して暮らせる社会を作るために脱炭素に向けた動きが世界的に加速しています。
脱炭素とは、地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスの二酸化炭素の排出量を減らし、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて実質的にゼロを目指す取り組みのことです。私たちの日常生活は、金属やセメント、プラスチックなど多種多様な資源・素材によって支えられています。しかし、その一方、こういった素材の生産活動が温室効果ガス排出の大きな要因の一つとなっているのも事実です。
また、脱炭素化社会に必要となる蓄電池、モーター、半導体等の製造には、銅やレアメタル等の非鉄金属材料が不可欠であり、今後、風力発電や太陽光発電、EV等の導入・拡大が進むにつれて、供給の確保は一層重要となります。このため近年では、こういった脱炭素化や持続可能な社会をめざす手段の一つとして、省資源な材料の活用や、資源の使用量削減や素材生産工程を脱炭素化するための技術開発が注目されています。
脱炭素社会については以下のコラムで細かくご紹介しています。
省資源実現のために必要な3Rの取り組み
私たちの生活や産業を支えている資源は、地球上に限られた量しか存在しません。このため持続可能な社会をめざすには、脱炭素だけでなく限りある資源を効率的に利用し、汚染を予防することも重要です。
こういった省資源を実現するために必要なのが、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3Rの取り組みです。
Reduce(リデュース)とは、できるだけ無駄な資源利用を少なくすることです。具体的には再生不能な天然資源の消費抑制や、耐久性の高い製品、少ない材料・部品で作られた製品開発などがその例として挙げられます。
また、Reuse(リユース)は再使用、Recycle(リサイクル)は再生利用という意味で、使用済み製品を回収して再使用したり、新製品に作り替えたりすることを指します。
広義でいえば、こういった3Rをかなえる材料も省資源な材料といえるでしょう。
省資源な材料を利用・開拓するメリット
省資源な材料の開拓や、省資源な製造過程に活用することには、主に以下のようなメリットが存在します。
- 特定資源に依存するリスク、価格変動のリスクを避けられる
- エネルギーの使用量が抑えられ、CO2発生量を削減できる
- 原材料の使用量を抑えることができる
- 水の使用量を抑えることができる
特定資源に依存するリスク、価格変動のリスクを避けられる
その原材料がなければ製品・サービスを提供できないなど、特定の資源に依存することは大きなリスクです。資源が枯渇した場合、該当製品やサービスが提供できなくなるだけでなく、世界的に需要が高まった場合も、価格高騰などにより産業や経済が大打撃を受けることが予想されます。
その点、従来の原材料のかわりとなる省資源な材料が開拓できれば、こういった問題は解決へと向かいます。また、完全に代替することは難しくても、省資源な材料を利用すれば天然資源の枯渇を遅らせることが可能です。
エネルギーの使用量が抑えられ、CO2発生量を削減できる
CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスが発生する主な原因は、電力や熱などのエネルギー利用や化石燃料の燃焼です。特に製造業などの産業部門はその排出量がもっとも多く、日本国内の排出量の約35%を占めるといわれています
参照:2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について | 環境省
このため省資源な材料を利用して、エネルギーの効率化や生産、廃棄におけるエネルギー消費を抑制することは、CO2などの温室効果ガス削減にも役立ちます。
原材料の使用量を抑えることができる
石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料や金属などの鉱物資源は、埋蔵量に限りがある枯渇性資源です。省資源な材料の開拓によるエネルギー源の多様化や効率的なエネルギー利用は、こうした資源の枯渇を遅らせるのに役立ちます。
水の使用量を抑えることができる
温室効果ガスによる気候変動は、水資源にも影響を及ぼします。たとえば、地球温暖化によって気温が高くなると、降雪量が減る、融雪の時期が早まるなどして、春夏の水資源量が減少します。また、気候変動が引き起こす大雨による水害や干ばつも水不足の一因であるといえるでしょう。
なお、水の主な使用用途は農業用水が約68%、生活用水が約19%、工業用水が約13%だといわれています。
出典:水資源の利用状況|水資源 – 国土交通省
原材料や製造プロセスを工夫すれば、こういった製品の製造や冷却、洗浄などの工程で必要となる農業用・工業用水の使用量を抑えることが可能です。
鉱物資源をもとにした省資源な材料について
レアメタルをはじめとする鉱物資源は、生活に必要不可欠でありながら枯渇リスクがあり、なおかつ日本においてはその大部分を輸入に頼っているという現状があります。
レアメタルとは、埋蔵量が少ない、抽出が難しいなどの理由から希少(レア)とされる非鉄金属のことです。デジタル機器や家電などの生活必需品に使われているほか、電気自動車や蓄電池など脱炭素化を実現する機器の生産にも必要不可欠ですが、その生産は海外の少数国に限定されています。
こういった理由から、レアメタルをはじめとした鉱物資源は特に安定的な供給をめざした循環的な利用すなわち省資源な材料の活用が求められる分野の一つです。
住友金属鉱山の省資源な材料への貢献
省資源な材料を使用することは製造時に排出する二酸化炭素だけではなく枯渇資源の節約という観点から見ても重要です。住友金属鉱山では、各材料製品の開発を通して脱炭素社会やSDGsの達成に向けた取り組みを行なっています。
ここからは、そのなかでも資源の節約や高効率化、有効活用などの観点から省資源に貢献している製品を紹介します。
金属錯体導電性ペースト
次世代の実装技術プリンテッドエレクトロニクスの普及を促進する材料として開発された導電材料です。
一般的な電子回路形成技術は、基板全面に形成された金属材料から不要な部分を除去して形成されるため、材料・エネルギー消費が課題です。それに対してプリンテッドエレクトロニクスは、必要な部分のみ導電性インクを塗布する技術であることから、使用量、環境負荷、製造コスト低減の効果が期待できます。
超微粒ニッケル粉
多岐にわたる電子部品への応用が期待できる超微粒ニッケル粉です。
長年培った湿式合成技術をもとにした独自の湿式プロセスにより、0.1μm以下の微粒子を実現いたしました。さらに均一な粒度分布を有しており、分級工程が不要であるため無駄が少ないという特性があります。超微粒ニッケル粉を活用することで、部品の軽薄短小化を実現し、材料の省資源化への貢献にもつながります。
希土類磁石材料
希土類磁石とは、レアメタルの一種である希土類(レアアース)を原料とした磁石です。希土類磁石としては主にNd(ネオジム)磁石が挙げられますが、価格高騰などのリスクがあるため安定的な調達に課題があります。
それに対して住友金属鉱山の「Wellmax®」は、複数存在する希土類元素のなかの余剰となっている元素:Sm(サマリウム)を用いた、SmFeN(サマリウム鉄窒素:以下SFN)磁石材料を主力とする製品です。余剰元素であるSm(サマリウム)を活用することは、地球資源の有効利用につながると期待されています。さらにSm(サマリウム)は原料調達や価格変動のリスクもネオジム(Nd)に比べ少ないため、安定的な価格・供給が期待できます。
【製品紹介】希土類磁石材料 Wellmax®-SmFeN磁石材料の詳細を見る
【事例紹介】価格変動リスクが少ない希土類磁石はないのか?
まとめ
次世代になるべくクリーンな地球環境を引き継ぎ、多くの資源を残すための手段として、近年では省資源な材料に注目が集まっています。省資源な材料とは、従来の材料の代替物となったり、少量で高い性能を発揮したりすることで、使用する資源の量を減らせる材料のことです。
こういった省資源な材料を、製品や製造・廃棄処理の工程に利用することは、資源の枯渇の予防や脱炭素化に役立ちます。特に石炭や天然ガス、レアメタルなどの鉱物資源は、現代生活に必要不可欠でありながら枯渇リスクがあり、日本ではその大部分を輸入に依存しているのが現状です。このため省資源な材料の活用などを通して、安定供給を確保できる体制を構築する必要があるといえるでしょう。