コラム
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工場の稼働では高温の熱が日常的に発生していますが、その熱が利用されることはほぼありません。住友金属鉱山の結晶グループでエネルギーハーベスティング技術の実用化に取り組む阿部広研究員は、そんな「捨てられる熱」を電気へ変える技術の確立を目指し、マグネシウム錫(スズ)単結晶材料の開発に取り組んでいます。 光・熱・振動・電波などの微小なエネルギーを電気に変換するエネルギーハーベスティング。その技術を社会課題の解決につなげるための取り組みや社会実装への想いを阿部研究員に語ってもらいました。
阿部 学生時代から電気やプログラミングに興味があり、大学は工学部に進学し、研究室で熱電材料に出会いました。熱から電気を作るという発想が興味深く、さらに材料の結晶構造次第で発電性能が大きく変わることも知り、結晶材料にも強く惹かれました。「この原子はどう並んでいるのか」「結晶構造によって性質はどう変わるのか」といったことを考えるのはとても楽しい時間で、生涯を通して研究に関わっていきたいと考えるようになりました。
阿部 研究とひと口に言ってもいろいろな分野がありますが、とりわけ結晶材料に携わりたい想いが強く、それを実現できる就職先を探す過程で当社を知りました。結晶材料を製品化し社会へ提供している企業はそれほど多くはありません。そのなかでも当社は特に単結晶材料を強みとしており、ここなら自分の興味や研究室での経験を活かせると感じました。実際、子会社の工場での製造や品質管理の経験を経て結晶材料の研究に取り組むことができました。その後、社内でエネルギーハーベスティングをテーマとした新しい研究が始まったことをきっかけに、学生時代に関わった熱電材料の研究に再び取り組んでいます。
阿部 熱を電気に変換できる材料です。たとえば工場では、製品の製造工程で生み出された高温の熱のほとんどが利用されることなく排出されています。熱電材料を活用してその熱を電気として回収できれば、エネルギーの有効活用が実現し、カーボンニュートラルにも貢献できます。
私たちは今、その熱電材料を単結晶で作る研究を重ねています。一般的な熱電材料の多くが多結晶ですが、当社の長年磨いてきた単結晶材料の製造技術を活かせば、これまでなかったような高い性能を持つ熱電材料を作ることができます。
現在開発しているのは、マグネシウム錫(スズ)化合物単結晶が温度差に反応して発電する材料技術で、VB法(垂直ブリッジマン法)という単結晶育成法を用いた低コストでの材料生産を目指しています。高温域や負荷の大きな環境でも高い性能を発揮することが期待できる材料であり、工場排熱のような高温の熱に対して活用できれば、「捨てられる熱」の多くを「価値ある熱」に変えることが可能となります。
阿部 材料単体では、様々な知見を活用することで、良好な性能を維持しながら、1インチの単結晶まで育成できるようになりました。しかし、熱電材料はそれだけでは価値を発揮できません。モジュール化して実際の機器に組み込み、お客様が使いやすい形にまで仕上げることで、初めてその価値を存分に発揮します。その実現に向け、現在は共創のパートナーとなってくださる方を探すフェーズへと徐々に移っています。デバイスメーカー様、熱マネジメント関連企業様、工場設備・省エネソリューション企業様などと積極的に交流していきたいと考えています。
私は以前、「優れた材料なら自ずと社会から求められるはず」と単純に考えており、今回の熱電材料も性能が良く大きさも世界トップレベルの材料ができたという自信がありました。ところが、ある日、お客様を訪問し材料の魅力をお伝えしたものの、期待していたようなリアクションをいただくことはできませんでした。材料の品質や性能しか見ておらず、お客様が必要とするモジュールやシステムまで考えが及んでいなかったのがその原因でした。本当に求められるものは何かという視点で考えることの大切さを強く思い知った瞬間であり、研究に対する考え方を大きく変えるきっかけとなりました。
阿部 良い材料を作ることだけが研究者の役割ではない、また、自分や自社の力だけでは社会は変えられない、と考えるようになりました。モジュールを作ってくださる企業様、発電システムの開発企業様、そのシステムを実際に利用する現場の方々など、多くの企業や関係者と共に考えながら研究を進めなければならないと痛感しました。そのためには、研究所のなかだけで課題を解決しようとせず、自分自身が外に出て、多くの方と話をしながら、一緒に技術を形にしていく姿勢が重要です。最近は展示会や学会などへも積極的に足を運びながら、当社の熱電技術をより早く、かつ広く社会に届けるための取り組みを進めています。
さらに社内でも、異なる専門性を持つ自社の仲間とも連携しながら研究を進めています。「研磨ならあの人」「結晶育成ならこの人」というように、それぞれが持つ専門知識を持ち寄ることで新しいアイデアが生まれることもありますし、多くの仲間の知見や技術が集まることで停滞していた研究が前に進む可能性もあります。長い歴史のなかでさまざまな技術を磨いてきた当社だからこそできる連携が生まれ始めていると感じています。
阿部 まずは何より、マグネシウム錫化合物単結晶による熱電材料を世の中へ送り出したいです。熱電材料にはさまざまな可能性があります。その可能性を現実のものにするために、多くのパートナーとの連携を目指して、これからも積極的に外に出て新しい出会いを探していきたいと思っています。
私たちには、長年培ってきた単結晶材料開発の技術力があります。その技術をさまざまな企業や研究機関の皆様と掛け合わせれば、きっと新しい価値が生み出せるはずです。当社の熱電材料が多くの人の役に立つ技術として大きく羽ばたく日を夢見て、これからも多くの方々と力を合わせながら挑戦を続けます。
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排熱を活かす「熱電発電」の新潮流
「X-MINING(クロスマイニング)」は、住友金属鉱山のDNAのもとに新たに始まる、未来を見据えた新しい共創のかたちです。
日本を代表する資源製錬会社の一つ住友金属鉱山には、積み上げた独自の技術と素材力があります。その技術や素材力も今や私たちの手の中でのみ守り育てる時代ではなくなりました。ならば、それらを有効に活用しイノベーションを実現するにはどうすべきか。その答えを共に探すパートナーと技術の創出や課題の解決に取り組むプロジェクトが「X-MINING(クロスマイニング)」です。
本ウェブサイトでは、材料の機能や技術、SDGsに貢献するソリューション事例など幅広く紹介します。当社製品と皆様のアイデアを”共創"(クロス)させ、社会にインパクトを与える新たな価値を“掘り起こすこと”(マイニング)を目指します。
X-MININGは、住友金属鉱山とあなたで新たな技術の創出や課題の解決に取り込むプロジェクト。お気軽にお問い合わせください。
X-MININGのイノベーションの
起点となる
住友金属鉱山の材料製品を紹介します。