コラム
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住友金属鉱山の関連会社であるSMMプレシジョンで結晶育成に携わる藤井氏は、研究所で培った知見を量産現場へつなぎながら、結晶育成の高度化に取り組んでいます。研究所から結晶育成の量産現場へと活躍の場を移した現在も、研究所時代に身につけた「現象を深く捉える姿勢」や「なぜそうなるのかを考え抜く習慣」が、日々の業務に活きています。
大学時代から結晶に関する研究に携わってきた藤井氏にとって、研究者としての原点は、育成した単結晶の美しさにありました。組成や条件を少し変えるだけで、外観や品質が大きく変わる点に強い面白さを感じ、「結晶をつくること」を仕事にしたいと考えるようになったそうです。こうした関心が、現在の結晶育成の業務につながっています。
今回、藤井氏に、研究者としての原点やSMMプレシジョンでの現在の業務、今後の展望について話を聞きました。
――研究開発の世界に興味を持ったきっかけを教えてください。
藤井: 結晶分野に関心を持ったきっかけは、大学時代の研究でした。でき上がった単結晶の美しさに惹かれたことに加え、組成や条件のわずかな違いで、単結晶の性質や見え方が大きく変わる点に面白さを感じました。
自分の手で組成や条件を確かめ、狙った性質の単結晶を得る過程にやりがいを感じる一方で、結晶育成は思い通りに進まないことも多く、時間をかけて試行錯誤を重ねる難しさもありました。
「育成した単結晶の美しさ」が印象に残り、単なる材料開発ではなく、成長過程そのものを見ていく面白さに惹きこまれたことが、研究の原点になっています。
――住友金属鉱山に入社した理由を教えてください。
藤井: 住友金属鉱山への入社を決めた理由は、結晶材料に携われる環境があったことに加え、先輩社員を通じて仕事のイメージが持ちやすかったからです。採用面接やリクルーターとの接点を通じて関わった社員の印象が良く、入社後もその印象に大きなギャップはありませんでした。
また、大学時代に培った経験を会社で生かせると感じたことも、入社の後押しになりました。結晶材料の研究を続けられることに加え、周囲に相談しながら進められる環境があったことも、安心して飛び込めた理由でした。
藤井: 入社後の研究所時代に身につけたこととして、「何を優先すべきか」をじっくり考える習慣があります。研究所では、試験回数が限られている中で最も意味のある実験計画を立て、その結果を踏まえて次の一手を考える必要がありました。
その習慣は、現在のSMMプレシジョンでの業務にも直結しています。量産に向けた条件出しでは、短い時間で判断を下す場面が多いのですが、研究所で養われた準備の進め方や仮説の持ち方がそのまま生きています。
特に、研究で身につけた「じっくり考える」習慣があるおかげで、出てきた結果を見てから考える時間が減り、量産現場での迅速な判断にもつながっています。
――現在取り組んでいる業務について教えてください。
藤井: 結晶育成は「製造」よりも「育成」に近いと考えています。単に同じものを再現するのではなく、対象となる結晶ごとに状態を見極め、条件を整えながら育てていく必要があるためです。
結晶は、育成条件のわずかな違いによって品質や成長の仕方が変わります。そのため、現象を観察し、原因を考えながら、状況に応じて条件を調整する技術的な判断が求められます。経験に基づく知見も重要ですが、それをデータや記録と結びつけ、次の世代へ技術として伝えていくことが大切です。
そうした判断や工夫を積み重ねながら、結晶の性質を理解し、より良い状態へ導いていく過程に、結晶育成ならではの面白さがあります。
――大口径化への対応では、どのような難しさがありますか。
藤井: 現在特に苦心しているのが、量産品の大口径化への対応です。サイズが変わるだけで結晶の育成挙動が大きく変わり、思うように育成できない場面もあります。
こうした難しさに対し、過去の文献や社内に蓄積された技術報告書を参照しながら、育成条件の組み立てを進めています。ただし、過去の知見は参考になる一方で、結晶の種類が異なることもあり、欲しい情報をピンポイントで探し出しにくいことが課題となっています。
そのため、研究所と量産現場の連携を深めることが重要になります。研究所に相談しながら大口径化を進めることで、ひとりでは見えなかった観点や改善のヒントを得られる場面が増えています。
研究知見を量産の現場で再現可能な形に落とし込むことが、今後の技術展開に欠かせないと考えています。
――今後に実現したいことを教えてください。
藤井: 今後については、SMMプレシジョンで培った結晶育成の知見を、AIデータセンター向け結晶など新たな市場ニーズにも広げていきたいと考えています。住友金属鉱山グループが作り上げてきた50年を越える結晶育成の技術力を、研究開発と量産現場の両面から次世代へつないでいくことが、今後の大きなテーマです。
また、結晶育成は、現象を見極め、条件を設計し、試行錯誤を重ねながら最適解を探る仕事です。高度な知見と経験が求められるからこそ、技術を蓄積し、次世代へつないでいくことに価値があります。
そうした仕事に共感し、ともに考えながら技術を前に進めていける人材と出会いたいという思いがあります。
――最後に、この記事の読者の皆様へメッセージをお願いします。
藤井: 結晶育成の現場では、現象を深く捉え、なぜそうなるのかを考え抜く姿勢が重要です。研究所で培った知見を量産現場へ、量産現場で得た気づきを次の研究へつなぐ。その循環を通じて、結晶育成の新たな可能性を広げていきたいです。
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